どこで道を間違えたのか、もはや定かではない。
XX市の市街地を抜け、古びた峠を越えたはずだった。しかし、ある一点を境に、アスファルトの亀裂から突き出した雑草の背丈が異常に高くなり、両脇の杉林が日光を拒絶するように覆いかぶさってきた。
深い山道を彷徨ううちに、気づけば周囲は濃密な霧に飲み込まれ、スマートフォンの電波さえもあやふやになり、進行方向どころか現在地さえも判然としなくなっていた。
いつの間にか細くなった道はUターンをするのも困難だ。
……どうしよう、このまま進むしかない。
ため息をつき、さらに車を進めると道すがらに一軒の古びた民宿が姿を現した。廃屋と言われても信じてしまいそうな、古さを感じる建物には「夙彩村 民宿はやて」と、そう書かれていた。
――夙彩村。
聞いたことがない地名だ。いつの間にかだいぶ遠くまで迷い込んでしまったらしい。
とりあえず、今いる場所と道を聞こうと「夙彩村 民宿はやて」の駐車場へと車を向けた。
その駐車場はさびれた民宿の雰囲気とは裏腹に、ほぼ満車状態だった。
自分が知らないだけで、有名な秘境のような場所なのかもしれない。
そんなことを考えながら車を降り、民宿の入り口に立つ。玄関の前には無造作に黒いゴム長靴が放置され、「民宿はやて」と書かれた看板の設置された柱には、大きく斜めの日々が走っている。
――この民宿、本当にやっているんだろうか。そんなことを考えながら、恐る恐る扉をたたく。
「すみません。道に迷ってしまって、地図などがあれば見せていただきたいんですが――」
扉を開くと、その中は昭和のまま時が止まってしまったような空間だった。
「おや、あなたも祝祭へ参加するお客さんですか?」
現れた老婆はそう
XX市の市街地を抜け、古びた峠を越えたはずだった。しかし、ある一点を境に、アスファルトの亀裂から突き出した雑草の背丈が異常に高くなり、両脇の杉林が日光を拒絶するように覆いかぶさってきた。
深い山道を彷徨ううちに、気づけば周囲は濃密な霧に飲み込まれ、スマートフォンの電波さえもあやふやになり、進行方向どころか現在地さえも判然としなくなっていた。
いつの間にか細くなった道はUターンをするのも困難だ。
……どうしよう、このまま進むしかない。
ため息をつき、さらに車を進めると道すがらに一軒の古びた民宿が姿を現した。廃屋と言われても信じてしまいそうな、古さを感じる建物には「夙彩村 民宿はやて」と、そう書かれていた。
――夙彩村。
聞いたことがない地名だ。いつの間にかだいぶ遠くまで迷い込んでしまったらしい。
とりあえず、今いる場所と道を聞こうと「夙彩村 民宿はやて」の駐車場へと車を向けた。
その駐車場はさびれた民宿の雰囲気とは裏腹に、ほぼ満車状態だった。
自分が知らないだけで、有名な秘境のような場所なのかもしれない。
そんなことを考えながら車を降り、民宿の入り口に立つ。玄関の前には無造作に黒いゴム長靴が放置され、「民宿はやて」と書かれた看板の設置された柱には、大きく斜めの日々が走っている。
――この民宿、本当にやっているんだろうか。そんなことを考えながら、恐る恐る扉をたたく。
「すみません。道に迷ってしまって、地図などがあれば見せていただきたいんですが――」
扉を開くと、その中は昭和のまま時が止まってしまったような空間だった。
「おや、あなたも祝祭へ参加するお客さんですか?」
現れた老婆はそう



