東京都世田谷区・的井夜子の部屋にて
休日と有給を組み合わせ、東京の夜子の住むマンションを訪れた。
このマンションへ訪れるのも久しぶりだ。最後に訪れたのは数か月前、夜子と実際に会ったのはあの日が最後だ。
夜子からもらっている合鍵を差し込み、ゆっくりと回す。 カチリ、という乾いた音がやけに大きく響いた。
一歩足を踏み入れると、そこには彼女が過ごしているその時間が、そのまま凍りついたような空間が広がっていた。 カーテンの隙間から差し込む西日が、宙に舞う埃を白く照らしている。脱ぎ捨てられた部屋着、半分まで飲まれたペットボトルの水、机の上に積まれた資料の山。主を失った部屋は、ただひたすらに静まり返っていた。
――確かに夜子は片付けがうまい方ではない。しかし、ペットボトルの水を飲みかけのまま冷蔵庫にしまいもせずに一泊二日の旅行に出かけるだろうか。
少しそんな疑念を覚えるが、夜子ならばそう言うことをしそうでもある。
私は首を振って気を取り直し、夜子の部屋へと入っていった。
私は、彼女の両親に「何か手がかりを探す」と伝えて、この部屋へ来た。だが、実際に足を踏み入れてみると、自分が土足で彼女のプライバシーを汚しているような、言いようのない罪悪感に襲われる。
「夜子……」
小さく呟いてみるが、返事はない。 私は、彼女が仕事用に使っていたデスクに向かった。 ライターという職業柄、彼女の机の上は常に資料で溢れていた。今回の『祝祭村からの脱出』に関するものも多い。告知のプリント、二枝森村周辺の地図、そして「エンノ舎」の過去のイベントに関するスクラップ。
その積み上げられた資料の一番上に、それは置かれていた。
ノベライズ版『祝祭村からの脱出』
その冊子には、確かにそう書かれていた。
「……あれ?」
確か、『祝祭村からの脱出』については、商業出版は取りやめになり、クラウドファンディングのリターン版はまだ完成しておらず送付されていないはずだ。それが、どうしてここにあるんだろう。
私はなんだか嫌な予感がして、このノベライズ版『祝祭村からの脱出』を手に取った。
休日と有給を組み合わせ、東京の夜子の住むマンションを訪れた。
このマンションへ訪れるのも久しぶりだ。最後に訪れたのは数か月前、夜子と実際に会ったのはあの日が最後だ。
夜子からもらっている合鍵を差し込み、ゆっくりと回す。 カチリ、という乾いた音がやけに大きく響いた。
一歩足を踏み入れると、そこには彼女が過ごしているその時間が、そのまま凍りついたような空間が広がっていた。 カーテンの隙間から差し込む西日が、宙に舞う埃を白く照らしている。脱ぎ捨てられた部屋着、半分まで飲まれたペットボトルの水、机の上に積まれた資料の山。主を失った部屋は、ただひたすらに静まり返っていた。
――確かに夜子は片付けがうまい方ではない。しかし、ペットボトルの水を飲みかけのまま冷蔵庫にしまいもせずに一泊二日の旅行に出かけるだろうか。
少しそんな疑念を覚えるが、夜子ならばそう言うことをしそうでもある。
私は首を振って気を取り直し、夜子の部屋へと入っていった。
私は、彼女の両親に「何か手がかりを探す」と伝えて、この部屋へ来た。だが、実際に足を踏み入れてみると、自分が土足で彼女のプライバシーを汚しているような、言いようのない罪悪感に襲われる。
「夜子……」
小さく呟いてみるが、返事はない。 私は、彼女が仕事用に使っていたデスクに向かった。 ライターという職業柄、彼女の机の上は常に資料で溢れていた。今回の『祝祭村からの脱出』に関するものも多い。告知のプリント、二枝森村周辺の地図、そして「エンノ舎」の過去のイベントに関するスクラップ。
その積み上げられた資料の一番上に、それは置かれていた。
ノベライズ版『祝祭村からの脱出』
その冊子には、確かにそう書かれていた。
「……あれ?」
確か、『祝祭村からの脱出』については、商業出版は取りやめになり、クラウドファンディングのリターン版はまだ完成しておらず送付されていないはずだ。それが、どうしてここにあるんだろう。
私はなんだか嫌な予感がして、このノベライズ版『祝祭村からの脱出』を手に取った。



