ノベライズ版「祝祭村からの脱出」にまつわる記録

件名: 二枝森村の郷土資料を手に入れました

差出人: 小野寺タクミ takuonomys@XXXX.com
宛先:浅野景 asano_kei9987@xxx.ne.jp

浅野さん、小野寺です。
二枝森、いや贄森の件について、資料を手に入れることが出来ました。
該当部分のスキャン画像をお送りします。

その後、的井さんの手がかりはありましたか?
この資料が参考になれば幸いです

小野寺


『八重杜郡・伝承の足跡(昭和42年刊)』より
贄森(にえもり)の伝説(P83~85)

一.「贄森(にえもり)」の地名の由来
現在の二枝森(にえもり)地区は、古くは「贄森」と記されていた。 この地は三方を険しい山に囲まれ、中央に深い湖を抱く閉鎖的な地形である。度重なる飢饉と疫病に見舞われた中世、村人たちはこの災厄を「山からの神の空腹」と呼び、それを鎮めるために独自の信仰を形作ったとされる。 地名は、神への捧げ物(贄)を置くための「聖なる森」であったことに由来する。

二.「神送り」と五つの贄
この地に伝わる「神送り」の儀式は、単なる収穫祭ではない。山に棲まうとされる古き神(大滝竜、土蜘蛛等と呼称される)に対し、三十年に一度、汚れを移した「依代(よりしろ)」を捧げ、村の外へと追い出す(送る)ための神事である。

伝説によれば、神を満足させるためには**「五つの異なる死」**が必要であると説かれている。

一の贄(水):大滝竜に捧ぐ。喉を潤すための清らかな水。

二の贄(土):お山の大猿に捧ぐ。大地に還る肉。

三の贄(風):土蜘蛛に捧ぐ。魂を運ぶ風。

四の贄(木):神樹に括る。天へ昇るための梯子。

五の贄(火):焔に乗せる。神を異界へ還すための光。

この「五つの贄」が揃うことで初めて祝祭は完成し、次の三十年の平穏が約束される。かつては人身御供が行われていたという記録が一部の古文書に見られるが、明治以降は人型(ひとがた)を焼く形式へと簡略化された。一部では小動物を贄にしていたという説も散見される。

三.「案内人(しるべ)」の存在
祝祭を遂行するためには、供物を選ぶ「案内人」が必要とされる。 案内人は村の血筋から選ばれ、外から来た者(よそ者)を神の元へと導く役割を担う。伝承では、案内人は「決して感情を見せてはならない」とされており、無表情な面(あるいは化粧)を施して神事に臨む。

四.禁忌(タブー)
祝祭の最中に「数」が狂うことを、村人は最も恐れる。 生贄の数が足りなければ神は怒り、逆に多すぎれば神は居座る。特に「五番目の火」において、捧げられるべきでない者が焔に触れたとき、祝祭の夜が明けることなく恐ろしいことが起きると村人たちは信じていた。