ひと雫の魔法

 気がつけばセミロングの髪の女子を見ている。
 
 《《彼女》》は西高生徒ではないのだから見ても仕方ないのはわかっているのに、ついつい目で追ってしまう。そして、当たり前だが《《彼女》》ではなくてがっかりする。

 俺はまったく何をしてるんだ。



 その日の朝も、家の最寄りの駅で電車を待っている間、セミロングの女子を見かけては《《彼女》》でないか確認していた。
 世の中には数えられないほど人間がいるのだ。そんな簡単に会えるわけない。そう思っていたのだが。

「あ」

 思わず小さな声が漏れた。

 いや、まさか。 

 《《彼女》》かどうか見分けられる自信すらなかったのに。それなのに、俺はその女子が《《彼女》》であると一瞬で気づいた。

 彼女は駅のホームに上がってきて、俺と反対側のほうに歩いていく。人の少ない場所まで行くと、彼女は足を止めて右肩のスクールバッグを一度かけなおし、線路のほうをじっと見つめた。

 同じ駅だったのか。

 心臓の鼓動が急に早まり、足のつま先から手先まで脈打つのを感じた。