台風みたいなやつだなと呆れながら、俺は妹の言葉を反芻する。
まあ、確かに、今まで紗代と女子の話をしたことはなかった。女子のことを毛嫌いしていたし、一人の女子のことをこんなに考えたこともなかった。
俺は紗代から死守したチョコレートトリュフを一つ口に入れる。
甘さが抑えられたその味は、見た目とは違って凛とした面のある彼女に似ていると思った。
俺は彼女のことを思い返す。
多くの言葉を交わしたわけではない。
彼女の多くを知っているわけでもない。
けれど、新しい彼女は俺の興味をくすぐる。
学校での普段の彼女はどんななのだろう。
友人とどんな話をするのだろう。
ほかにどんなルーティンがあるのだろう。
彼女の手作りのチョコは、今日溜まっていた重く気詰まりな気持ちを少しずつ軽くしていった。
入っていた七つのチョコレートトリュフを平らげると、俺は一緒に入っていた封筒を手にした。
彼女の気持ちを食べ切った俺は、丁寧に封筒を開けた。中に入っていたシンプルな便箋を取り出し、開くと、凛とした字で一行の文がしたためられていた。
「あなたのことが好きです」
それだけだった。
潔いというか。
名前ぐらい書いてくれよな、と思って苦笑した。
自分が彼女をどう思っているか。
紗代は鋭いかもしれない。
彼女の手作りのチョコレートトリュフを食べたということは、俺も彼女に好意を抱いているということだ。
だから毎日彼女の乗る電車に乗り続けた。
彼女を遠目から見続けた。
明白なことだ。
俺はなんだか可笑しくなってしまった。
女子が苦手だった。女の涙なんてクソ喰らえと思っていた。
だから、女子を好きになれるのかもわからなかった。そんな自分を想像できなかった。
こんなに簡単に落ちてしまうなんて。彼女の涙には魔法か何かがかかっていたのか?
彼女が俺を騙すというのなら、それはそれで構わない。騙されてやるさ。
そんな気障ったらしいことを考えて、また一人で笑ってしまった。



