ひと雫の魔法

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「おにぃ、この服貸して?」

 洗濯後たたんで置いてあっただろう俺の服を、自分の胸元に合わせて、紗代は上目遣いで言ってきた。

「駄目って言ったらどうせ泣くんだろ?」
「さっすが、おにぃ。わかってんじゃん」

 高校生になった紗代はさらに強《したた》かに成長している。

「もってけば。返さなくていいから」
「わーい! さんきゅー、おにぃ!」

 紗代には何度も泣かれ、そして騙されてきた。

 紗代だけではない。俺はわかっている。女の涙は信用ならない。

 泣けばなんでも許されると思っている女が俺は苦手だ。