年が変わって一月になった。
俺は剣道部の予選会の一試合目に臨んでいた。団体戦で俺は副将を任され、対戦高校の中堅、副将の二人を破り、チームの勝利に少しは貢献できたと思う。
試合後、団体戦のメンバーみんなで互いを称えあった。個人戦、思うような試合運びができなかった俺は、この団体戦に救われた。
次の試合の間に女子の試合が始まったので、俺らはそれを観戦することになった。
対戦相手は偶然にも緑が丘女学院だった。
緑が丘女学院の先鋒の女子が、うちの高校の先鋒、次鋒の二人を破った。
落ち着いた竹刀さばきの、なかなかいい試合をする女子だなと思った。
その緑が丘女学院先鋒の女子は、うちの高校の中堅に敗れて下がると、面を外し、髪を振って一息つき、手の甲で額の汗をぬぐった。まっすぐなセミロングの黒髪が汗を含んで重たそうに光った。
俺の心臓がドクッと跳ねた。
まさか、と思って俺はその女子をまじまじと見たが、見間違いではない。その女子は朝の駅の《《彼女》》だった。
彼女は俺の視線に気づいたのか、俺のほうを向いて口元をほころばせ、小さく礼をした。
朗らかで、自信さえ漂わせるその笑みは、俺を魅了した。
彼女は電車を待っているときとは明らかに雰囲気が違っていた。いつも自信なさげに寄せられていた眉は、意志の強そうな弧を描き、凛とした強い光が大きな瞳には宿っていて、すっと伸びた背筋が美しかった。汗で額に張り付いた髪もいつもより艶めいて見えた。
俺の知らない彼女がそこにはいた。
「賢司、次の試合始まるぞ? どうした?」
「あ、ああ」
彼女を横目に見ると、同校の部員たちと笑いながら声を掛け合っていた。
彼女がこんなにも輝いて見えるなんて。
こうしてみると、彼女は平凡な女子には見えなかった。俺の胸が騒つく。
彼女が人生を楽しんでいないのではと勘違いしていた。そんなのは俺の思い違いでしかなかった。
彼女は剣道を心から楽しんでいるように見えた。そして楽しんでる彼女は生き生きとして美しかった。
俺は剣道部の予選会の一試合目に臨んでいた。団体戦で俺は副将を任され、対戦高校の中堅、副将の二人を破り、チームの勝利に少しは貢献できたと思う。
試合後、団体戦のメンバーみんなで互いを称えあった。個人戦、思うような試合運びができなかった俺は、この団体戦に救われた。
次の試合の間に女子の試合が始まったので、俺らはそれを観戦することになった。
対戦相手は偶然にも緑が丘女学院だった。
緑が丘女学院の先鋒の女子が、うちの高校の先鋒、次鋒の二人を破った。
落ち着いた竹刀さばきの、なかなかいい試合をする女子だなと思った。
その緑が丘女学院先鋒の女子は、うちの高校の中堅に敗れて下がると、面を外し、髪を振って一息つき、手の甲で額の汗をぬぐった。まっすぐなセミロングの黒髪が汗を含んで重たそうに光った。
俺の心臓がドクッと跳ねた。
まさか、と思って俺はその女子をまじまじと見たが、見間違いではない。その女子は朝の駅の《《彼女》》だった。
彼女は俺の視線に気づいたのか、俺のほうを向いて口元をほころばせ、小さく礼をした。
朗らかで、自信さえ漂わせるその笑みは、俺を魅了した。
彼女は電車を待っているときとは明らかに雰囲気が違っていた。いつも自信なさげに寄せられていた眉は、意志の強そうな弧を描き、凛とした強い光が大きな瞳には宿っていて、すっと伸びた背筋が美しかった。汗で額に張り付いた髪もいつもより艶めいて見えた。
俺の知らない彼女がそこにはいた。
「賢司、次の試合始まるぞ? どうした?」
「あ、ああ」
彼女を横目に見ると、同校の部員たちと笑いながら声を掛け合っていた。
彼女がこんなにも輝いて見えるなんて。
こうしてみると、彼女は平凡な女子には見えなかった。俺の胸が騒つく。
彼女が人生を楽しんでいないのではと勘違いしていた。そんなのは俺の思い違いでしかなかった。
彼女は剣道を心から楽しんでいるように見えた。そして楽しんでる彼女は生き生きとして美しかった。



