彼女は困ったような顔をしたまま、もう一度ポカリスエットを飲んだ。汗はひいたようだけれど、彼女の顔色はよくないままだ。
彼女は黙っている。
彼女の眉間に寄る皺をどうにかできないかと、俺は思いつくままに言葉を紡いだ。
「あのさ、いつも同じ時間に同じ場所で電車を待ってるよな? 何か理由でもあるのか?」
俺の言葉に彼女は相変わらず気まずそうな顔のまま頷いた。
理由はあるのか。
彼女は口を開こうとはしない。
沈黙が重かった。彼女と普通に会話をしたいだけなのにうまくいかない。
俺の話題がよくないのか? 何なら彼女は答えてくれる? 考えろ。考えろ。
「線路に何かあるのか? 自殺でもするんじゃないかと心配になる」
こんなまた答えづらい重い話題。他になかったのか。
焦りが頂点に達したとき、彼女はやっと俺の方を向いた。
「自殺?」
「ああ。俺の見当違いならいいけど」
彼女の黒い瞳が揺れた。俺を見つめる大きな目。吸い込まれそうになる。
俺が彼女の目に囚われていると、彼女は困ったように笑った。
「そんなふうに見えていたなんて。自殺なんて考えてないです」
「なら良かった」
俺の口から安堵の声が漏れた。
「すみません。心配してくれてたんですね。ありがとうございます」
彼女は申し訳なさそうにそう言った。
彼女は俺が毎日見つめていたことをいいように誤解してくれたようだった。



