5分だけでも

 俺はその後どうやって自分の病室に戻ったのか、記憶があいまいだ。

 気が付いたときには自分のベッドの上に力なく腰かけていた。

 相楽さんは手術をしなければそう長くは生きられない。

 奇妙な感じだ。確かに顔色はよくないし、すぐ息は上がる。でも、相楽さんは生きてる。
 なのに、長生きしたくない?

 俺には全く理解できなかった。少しでも長生きして、やれるだけのことをやってから死ぬなら死にたい。まだこの年で死ぬなんて到底考えられない。
 手術をすれば今よりかは長生きできるはずなのに、それを拒むなんて正気の沙汰じゃない。

 ――せっかく出会えたのに。

 悔しい。あんなに心配している母親がいるのに。好きだって言った俺だっているのに。相楽さんにとってはどうでもいいことなのか?

 花火に誘われてふわっと膨らんだ心が一気にしぼんだ。
 逆に、花火を見るときに何を話せばいいのか、自分に相良さんを説得ができるのか、不安になった。

 昼ご飯も夜ご飯も食べたのだろうけど、思い出せないような状態で19時、相楽さんの病室へ向かった。