白い刃が、斬った。
音はなかった。
けれど、世界が一瞬、縦に裂けたように見えた。
朔夜さまの刀は、妖の胸の囮ではなく、その奥に隠れた歪んだ芯を正確に貫いた。黒い針のような芯が、刃の上で震え、ひび割れる。
甘い焦げ香が、ぷつりと途切れた。
次の瞬間、妖が叫んだ。
声というより、いくつもの不安が一斉に破れる音だった。黒い靄が空へ吹き上がり、白幕を染める前に細かく裂ける。香炉の灰から伸びていた筋が切れ、芯を失ってぼろぼろと崩れていく。
朔夜さまが最後に刀を振り抜いた。
増幅した妖は、完全に斬られた。
中庭を満たしていた黒い靄が、風に散る。
甘い焦げ香が消えた。
かわりに、冷たい外気と、こぼれた白湯の湯気と、濡れ布の木綿の匂いが戻ってくる。白幕はまだ揺れている。春の光が、もう一度その布を透かした。
音はなかった。
けれど、世界が一瞬、縦に裂けたように見えた。
朔夜さまの刀は、妖の胸の囮ではなく、その奥に隠れた歪んだ芯を正確に貫いた。黒い針のような芯が、刃の上で震え、ひび割れる。
甘い焦げ香が、ぷつりと途切れた。
次の瞬間、妖が叫んだ。
声というより、いくつもの不安が一斉に破れる音だった。黒い靄が空へ吹き上がり、白幕を染める前に細かく裂ける。香炉の灰から伸びていた筋が切れ、芯を失ってぼろぼろと崩れていく。
朔夜さまが最後に刀を振り抜いた。
増幅した妖は、完全に斬られた。
中庭を満たしていた黒い靄が、風に散る。
甘い焦げ香が消えた。
かわりに、冷たい外気と、こぼれた白湯の湯気と、濡れ布の木綿の匂いが戻ってくる。白幕はまだ揺れている。春の光が、もう一度その布を透かした。



