「嘘……」
その少年は見事メダルをキャッチしてみせた。
しかも、ジャンピングキャッチで。
あれはたぶん……1メートル近くジャンプしてたよね?
凄い。アニメみたいだ。
感動のあまり思わず拍手してしまう。
この子は一体何者なんだろう?
とりあえず『スイマー』であることは間違いなさそうだ。
上下黒のジャージのバックには、『MURAYAMA Swimming School』と書かれているから。
でも、それ以上の情報は見て取れない。
当該スクールに知り合いはいないから、たぶん初対面だとは思うんだけど。
「はぁ……はぁ……げふっ……がぁ~~~~っ!!!」
ああ、びっくりした。痰を吐くのかと思った。
静かにほっとしていると少年が振り返る。
うわっ。可愛い。パッチリきゅっとしたパーフェクト猫目だ。
こんな美少年そうそうお目にかかれるものじゃないぞ。
ほんと何者なんだろう。
「バカ野郎!! お前、何してんだ!!!」
……怒られた。
あれよあれよという間に距離を詰められて、胸にメダルを押し付けられる。
「このメダルはただのメダルじゃねえ! みんなの汗と涙が詰まってんだぞ! それをよりにもよって、ゴミ箱に捨てるたぁ何事だッ!!!」
暑苦しい。それに酷く乱暴だ。
そりゃ僕も悪かったけどさ。
「おいっ! 厳巳!! 聞いてんのか!?」
あれ? 知り合い?
僕が忘れてるだけなのかな?
気になるけど、今は謝るのが先決だよね。
ぱっと切り替えて、深く頭を下げる。
「ごめんなさい」
「おっ……おう……」
謝ったら、途端に大人しくなった。
唇を引き結んで、もじもじし出す。
熱くなりやすいだけで、割とフツーの子なのかな?
「やっぱしんどいワケ? プレッシャーとか……その……」
「別に? 何とも思ってないけど」
「なら、何で! 何で……いつも無表情で……記録出しても、ニコリともしねえんだよ」
……………………いつも?
いつも見てくれてるの?
気にかけてくれているの?
だから、こうして止めに来てくれたの?
「なぁ……何でだよ」
じっと見つめてくる。
下瞼は歪んで、眉間には皺が寄ってて。
――苦しそう。
――悔しそう。
何でそんな顔をするの?
浮かんだ一つ一つの疑問が期待に変わっていく。
思えばあのジャンプ力も凄まじかった。
だけど、まだまだ無名。
まさに『眠れる獅子』だ。
もしかして、この子が?
この子が僕の……?
掠れかけていた夢が、また煌めき出す。
懲りないな。
やれやれと首を左右に振って続ける。
「僕はね……待ってるんだ。僕を負かしてくれる『主人公』が現れるのを」
「はぁ? 何言ってんだ? どう考えてもお前が主人公――い゛ひゃっ!?」
僕は力任せに少年の頬っぺたを抓った。
どうやら相当痛かったみたいだ。
少年の目が >< になってる。
ちょっとやり過ぎたかな。
でも、可愛いから暫くはこのままにしておこう。
「僕は無双したいわけじゃない。追いかけたいんだ」
途端に少年の表情が曇る。
子供ながらに『そんなの無理だろ』って思ってるのかな。
自嘲気味に笑いながら、少年の頬っぺたから手を離す。
「あっ、諦めんなよ! 世界は広いんだぜ? 五年後、十年後にはきっとすげえヤツが出てくるって!」
子供に気を遣わせてしまった。
あ~あっ、ホント……何やってんだろ。
「ははっ……あ~、でも、安心したぜ。そいつさえ現れれば、お前は前みたく泳げるようになるんだな」
「……前?」
「ガキの頃の話だよ。その頃はお前、楽しそうに泳いでただろ」
「えっ……?」
君は…………………………
・眠れる獅子。
・小さな頃から僕を見守り続けてきた。
・情に厚い熱血漢。
…………………………だっていうの?
キタ。キタ! キタ!!!!
この子だ! この子だ!! この子だ!!!
「なっ!? ちょっ!!? 何だよっ!!」
彼の頬を包んで、無理矢理に顔を上げさせる。
彼は暴れたけど、僕は力任せに押さえ込んで――その瞳をじっと見つめた。
その少年は見事メダルをキャッチしてみせた。
しかも、ジャンピングキャッチで。
あれはたぶん……1メートル近くジャンプしてたよね?
凄い。アニメみたいだ。
感動のあまり思わず拍手してしまう。
この子は一体何者なんだろう?
とりあえず『スイマー』であることは間違いなさそうだ。
上下黒のジャージのバックには、『MURAYAMA Swimming School』と書かれているから。
でも、それ以上の情報は見て取れない。
当該スクールに知り合いはいないから、たぶん初対面だとは思うんだけど。
「はぁ……はぁ……げふっ……がぁ~~~~っ!!!」
ああ、びっくりした。痰を吐くのかと思った。
静かにほっとしていると少年が振り返る。
うわっ。可愛い。パッチリきゅっとしたパーフェクト猫目だ。
こんな美少年そうそうお目にかかれるものじゃないぞ。
ほんと何者なんだろう。
「バカ野郎!! お前、何してんだ!!!」
……怒られた。
あれよあれよという間に距離を詰められて、胸にメダルを押し付けられる。
「このメダルはただのメダルじゃねえ! みんなの汗と涙が詰まってんだぞ! それをよりにもよって、ゴミ箱に捨てるたぁ何事だッ!!!」
暑苦しい。それに酷く乱暴だ。
そりゃ僕も悪かったけどさ。
「おいっ! 厳巳!! 聞いてんのか!?」
あれ? 知り合い?
僕が忘れてるだけなのかな?
気になるけど、今は謝るのが先決だよね。
ぱっと切り替えて、深く頭を下げる。
「ごめんなさい」
「おっ……おう……」
謝ったら、途端に大人しくなった。
唇を引き結んで、もじもじし出す。
熱くなりやすいだけで、割とフツーの子なのかな?
「やっぱしんどいワケ? プレッシャーとか……その……」
「別に? 何とも思ってないけど」
「なら、何で! 何で……いつも無表情で……記録出しても、ニコリともしねえんだよ」
……………………いつも?
いつも見てくれてるの?
気にかけてくれているの?
だから、こうして止めに来てくれたの?
「なぁ……何でだよ」
じっと見つめてくる。
下瞼は歪んで、眉間には皺が寄ってて。
――苦しそう。
――悔しそう。
何でそんな顔をするの?
浮かんだ一つ一つの疑問が期待に変わっていく。
思えばあのジャンプ力も凄まじかった。
だけど、まだまだ無名。
まさに『眠れる獅子』だ。
もしかして、この子が?
この子が僕の……?
掠れかけていた夢が、また煌めき出す。
懲りないな。
やれやれと首を左右に振って続ける。
「僕はね……待ってるんだ。僕を負かしてくれる『主人公』が現れるのを」
「はぁ? 何言ってんだ? どう考えてもお前が主人公――い゛ひゃっ!?」
僕は力任せに少年の頬っぺたを抓った。
どうやら相当痛かったみたいだ。
少年の目が >< になってる。
ちょっとやり過ぎたかな。
でも、可愛いから暫くはこのままにしておこう。
「僕は無双したいわけじゃない。追いかけたいんだ」
途端に少年の表情が曇る。
子供ながらに『そんなの無理だろ』って思ってるのかな。
自嘲気味に笑いながら、少年の頬っぺたから手を離す。
「あっ、諦めんなよ! 世界は広いんだぜ? 五年後、十年後にはきっとすげえヤツが出てくるって!」
子供に気を遣わせてしまった。
あ~あっ、ホント……何やってんだろ。
「ははっ……あ~、でも、安心したぜ。そいつさえ現れれば、お前は前みたく泳げるようになるんだな」
「……前?」
「ガキの頃の話だよ。その頃はお前、楽しそうに泳いでただろ」
「えっ……?」
君は…………………………
・眠れる獅子。
・小さな頃から僕を見守り続けてきた。
・情に厚い熱血漢。
…………………………だっていうの?
キタ。キタ! キタ!!!!
この子だ! この子だ!! この子だ!!!
「なっ!? ちょっ!!? 何だよっ!!」
彼の頬を包んで、無理矢理に顔を上げさせる。
彼は暴れたけど、僕は力任せに押さえ込んで――その瞳をじっと見つめた。
