ざまあをください【完結/改稿済】

永良(ながら)

バスタオルを両手に持ったままの状態で、ぱっぱっと手を叩く。
すると、永良ははっとして――直後渋い顔をした。

「お前……マジでその格好で来たのか?」
「?」

僕は永良に促されるまま自分の体に目を向けた。
赤と黒のジャージ姿。
腕にはデカデカとJAPANと書かれていて、胸には国旗がプリントされている。

「ああ、そっか。選手団のジャージだったから、やたらと声かけられたのか」
「アホ過ぎんだろ」
「それだけ必死だったんだよ。一秒でも早く君に会いたかったんだ」
「…………」

永良は無言のままプールから上がると、僕からタオルをふんだくった。
僕はそれを無言で眺めつつ、徐に切り出す。

「一つ聞いていい?」
「……何だよ」
「どうして付き合ってくれたの? 僕が助けを求めた時にはもう、飛込への転向が決まってたんでしょ?」
「……お前がマジで困ってたからだよ。それで助けた。ただ、それだけだ」
「善人にもほどがあるよ」
「そうかよ」
「僕はどうしたらいいの? 君と友達になりたいのに区切りを付ける言葉が見つからない。謝ればいいのか、お礼を言えばいいのか」
「何もしなくていい――っ!」
「お願い。教えて」

永良の腕を掴んだ。
僕の手も永良の腕も震えてる。

「どうして怯えてるの?」
「……別に。そんなんじゃ」
「僕のせい?」

永良の黒い瞳をじっと見つめる。
彼は何か言いかけたけど、ぐっと口を噤んで……。

やっぱダメか、と思った瞬間――ぐっと顔を寄せてきて、頬っぺたに何かが触れた。あったかくて、やわらかい。

「???」
「これが理由だ」
「……は?」
「全部下心ありきってわけだ。最低だろ」
「シタゴコロ……?」
「そうだ。分かったなら、さっさと――っ!」

それとなく逃げようとする永良の体をガッチリホールドする。
とりあえず、それだけは出来た。
けど、変わらず思考はショートしたままだ。

頬っぺたにキス → これが献身と怯えの理由ってこと?

「意味が分からないんだけど」
「だあぁあ!!! 好きだって言ってんだよ!!! このバカ!!!」
「好き? 何を今更」
「!!??」
「好きに決まってるじゃない。何せ君は、僕の強火のオタクなんだから――」
「抱きてえんだよ!!! おめぇのことが!!!」

抱く? ハグならいくらでも……あ。

「君、ゲイだったの」
「……そうだよ。俺はお前のダチにすらなれねえんだ」

急に大人しくなった。
ああ、そうか。フラれると思ってるのか。

そんなに僕に嫌われるのが怖い?
そんなに僕のことが好き?

――何それ。最高じゃん。

「永良、僕も君を好きでいいよ」
「……意味分かんねえんだけど」
「君の恋人になってあげる」

顔を寄せて、永良の唇に自分の唇を重ねた。
あったかくて、ふにゃっとしてる。
これがキスか。何だか不思議な感じだ。

「んぅ!? んっ!! はっ!! バカ!! 何やってんだよ!!!」

顔を力任せに押してくる。
首を一回転させんばかりの勢いだ。

「痛いな。君、僕のことが好きなんじゃないの?」
「お前がとち狂ったことしてっから、こーして止めてやってんだろうが!!!」
「僕は本気だよ。君になら抱かれてもいい」
「…………………………………………は?」
「抱かれたいぐらい、君が好き」
「!!!!!????????」
「……ってことで。はい。万事解決」
「…………」
「永良?」
「あう……が、……ばっ……はうあ……!!!!!!!!」

永良は意味不明な言葉……というか、最早『音』を発した後で――ボンッと爆発した。

可愛い。僕は愛おしさのなすままに、もう一度永良の唇にキスをした。
だけど、永良はノーリアクション。変わらず茫然自失の状態だ。

反応がないのが何となく不服で、もう一発。
また無反応だったので、もう一発……と、気付けば目的を忘れてひたすらチュッチュッしてた。

今なら、カップル達がやたらとキスしてる理由が分かる。
凄く満たされるんだ。
だってこれは、恋人である僕にしか出来ないことだから。

「永良……っ、好き……へへっ、なんちゃって。……あ……!」

不意に頭に布がかかった。タオルだ。
意図が分からず、「何?」と戸惑っていると、永良がぐっと顔を寄せてきて。