午前零時、籠にいられない私は裸足で舞う

 しばらく、一人になった静かな部屋で立ち尽くしていた。


「……そろそろ行かなきゃ。」


 灯りは消したままの部屋。

 お別れをする前にぬるくなったお茶を飲み干す。

 そして、私の目に留まったのは一冊の本。


「牛郎織女…。」


 彼が前に薦めてくれた本だ。

 最後に、と思い頁をパラパラ捲る。


「思っているだけでは伝わらない…なんてい偉そうに言ったのに、一番私が出来てないじゃないか…。」


 自嘲気味に笑い、本の頁と頁の間に承曜へ宛てた手紙を挟む。

 それにはこれから先の行先も感謝も書いていない。

 ただ、


「ずっと、お慕いしております…。」


 それだけだった。

 部屋を出て例の壁穴に向かい、王都へと出る。


「……本当に来ちゃった…。」


 後宮とは対照的で夜なのに灯りがついている。

 その街を眺めながら振り返らずに真っすぐ進む。

 今更悲しいと言うには遅すぎて…。

 もう一度、もしまた出会えるのなら肩書も身分もいらずただ大勢の人の間をすれ違うように承曜に会えることを願う。