午前零時、籠にいられない私は裸足で舞う

 数時間後、既に後悔した。

 さっきから想像以上にどこを行くのを注目されるのだ。

 挨拶回りするにしろ、私が話していると空気が冷え切り、皆聞き耳を立ててるように感じる。

 なんだか、息苦しくて雁字搦めになったみたい。

 隣にいる彼を盗み見る。

 もしかして、彼も皇帝という身分に息苦しさを感じているのだろうか?

 でも、そんな感じに見えなくて、堂々としている。

 私はただでさえ使者一人にこうやって怯えて不安になって、堂々となんて出来てないのに…。

 肩をすくめていると、


「王和心皇后陛下。」


 誰かに呼ばれて前を向けば、


「っ…。」


 使者だった。

 なんの用だろうか?

 ……もしかして、私の正体に気づいてこの場で捕らえようと?

 待って、私は彼にだけはまだ知られたくない。

 どうせ言うなら、ちゃんと彼だけにもう少しだけ仲良くなってから言いたい…。

 それに、まだ私は彼に知られたときにどんな反応をするのか怖い。


「どうかいたしましたか?」


 握りしめて震えている指を袖の中に隠し、皇后として振る舞う。

 すると彼は、


「王和心皇后陛下の見せてくださった舞はとても素晴らしく、我々を歓迎してくださっているお気持ちが伝わりました。そこで、もう一度舞を見たくてですね。」


 私に、また舞えと?

 そんなことをしたら本当に正体がバレてしまう気がする。

 いや、彼は気づき始めているのかもしれない。

 ただ、確信が欲しいだけだ。

 だから、こうして私に近づいた。

 その外交向けの使者の笑みが“強がったって嘘はバレるぞ”と言っているように感じる。

 受けたら正体がバレるかもしれない、だけど断ったら余計怪しまれるかもしれない。

 どうしようか、葛藤していたら


「ニティヤ国の使者よ。」


 安心する声が聞こえたのと同時に肩に大きな手が乗って、そちらに引き寄せられた。

 驚いて見れば、それはやっぱり彼で、


「皇后は皆の皇后であるのと同時に、我の妻である。我は華麗に舞う皇后をこれ以上見せたくない。我以外の他の男達を魅了されたら困るからな。」


 それは、本心なの?

 そんな、本当に私のことを妻みたいに扱って…。

 使者は一瞬呆けたような顔をした後、カラカラと笑い出した。


「ははっ、常帝国の皇帝である現人神であるあなたを不安にさせるわけにはいきませんな。」

「そうしてくれ。」


 そうして、私は二回目を舞うことはなく宴の時間をその場凌ぎでやり過ごした。