午前零時、籠にいられない私は裸足で舞う

「………めでたし、めでたし。」


 さっきまでいた異国のベストセラーの物語を読んでみたけど、素敵な話だった。

 だけど、王子様と結ばれたその後が書かれていない。

 彼女は本当に幸せになれたのだろうか?

 違和感の残る真っ白なページを眺めて考える。


「和心!和心!」


 どうやら、じっくり考えている暇はないらしい。

 呼ばれた声の方へ向かう。


「姐様、どうかしましたか?」

「どうもこうもないわよ!今すぐにこの衣装のほつれを直して頂戴。」

「私のも。」

「私のもね。」


 両手にドサリと衣装が複数枚乗っかる。

 実は、数日前にこの理守行舞団に常帝国から皇帝の即位一周記念の宴に招待されたのだ。

 常帝国は世界にある七つの大陸の一つ完美大陸全土を支配している帝国だ。

 その歴史は古く、世界で一番最初に文明が発達してたくさんの王朝が栄えていた。

 そんなたくさんあった王朝は常帝国によって統治され、王承曜という人物によって支配されている。

 そんな常帝国からの招待ということで、姐達や義母は浮かれているのだ。

 ちなみに、この理守行舞団は世界中を旅しながら舞う団体で、発祥は常帝国。

 そして、私に衣装のお直しを頼んできたのは、舞娘の私にとっては姐にあたる舞姫の義姉の二人。

 義母はこの理守行舞団の舞主で、私が六歳の頃に拾ってもらったのだ。


「何?あんたは出道(デビュー)まだでしょう?」

出道(デビュー)をしていない舞娘を大事な宴に出せるわけにいかないじゃない。」

「和心は留守番をしていなさい。」

「はい、分かりました。」


 義母と義姉の言い分は分かる。

 だけど、彼女らの本心は違うだろう。

 私は舞の才能があるのか舞主である義母を凌ぐほどの実力と評価されたことがある。

 それに加えて、常帝国出身の義母や義姉とは違って、私は遠いサンスクリット大陸出身なので顔立ちが違って目立ってしまうのだ。

 黒髪で柔らかげな印象の彼女達に比べて、うねりのある金髪に青い瞳の私。

 皇帝の目に留まる危険性のある目立つ顔立ち、一目瞭然の実力と才能。

 拾ってもらった恩もあるから、私は今日もこうして彼女達の心を汲み取って仕事をする。