午前零時、籠にいられない私は裸足で舞う

 静まり返った、その日の夜。
 
 私は寝台に小さく丸くなる。

 昼間に彼が言っていたニティヤ国、その国は私の故郷であるナシュタ・サバヤター国を滅ぼした国の一つだった。

 今でも建物が焼け落ちる匂い、泣き叫ぶ声、人の形ではなくなっていく体が瞳に焼き付いている。

 そして、生き延びたことによって“その日”以来、私は生きるのが罪になった。

 ナシュタ・サバヤター国、その国は神を否定する科学者達によって出来た国だった。

 もともとその科学者達も神を信じていた国の出身のものだが、彼らは禁忌を犯してしまう。

 それは、神の時代からあるとされている聖書の内容に疑問を唱えたのが始まりだった。


 ーーー「モーセが海を割る、死者を蘇らせる…そのようなことは不可能だ。よって、これは偽りなのではなかろうか?」


 それを聞いた時の権力者たちは、こう返した。


 ーーー「聖書の内容を我々人間の技術で否定するのは愚の骨頂だ。」


 彼らは、自分達の正当性が崩れることを恐れ、科学者達を国外追放という形で処した。

 しかし数百年後、悲劇は起こる。

 科学者達を追放した国は、資源が枯渇したり天災に見舞われたりして大飢饉となった。

 しかし、科学者達は賢く工夫などをしたりして備え、ナシュタ・サバヤター国の人々は困らなかった。

 それを妬んだのか、あるいは欲からか、「神を否定した反逆国家を倒す」という大義名分を掲げ侵攻した。  

 自分達がこうして不幸になっているのは信仰心の薄い人間がいるからだ、と言ってね。

 そうして、人は形がなくとも信じているもののためなら戦える、ということを証明されたわけだが、証明された私達に待ち受けたのは地獄だった。 

 戦争が終わってからというのも、ナシュタ・サバヤター国はニティヤ国に占領された。

 占領された国の人間がどうなるか、もう言わずもがな分かるだろう。

 そう、生き残った人々は反乱分子とみなされ収容所に連れて行かれて処刑される。

 逃げ延びた私以外は皆捕まってしまった。

 その延長戦にいる私はだから、“生きるのが罪”なのだ。

 神を信仰することが当たり前のこの世界にとっては…。


「この話、陛下はどう受け止めてくれてくれるのかな?」


 現人神として信仰されている彼は私を危険分子として見るのだろうか?

 それとも、味方をして私を一人ぼっちにしないのか?

 それだったらそうだといいな。

 寝台から起き上がり、ふと窓を開け月を眺める。


「あーあ、みんな月を見るみたいに私を放ってくれたらいいのに。」