午前零時、籠にいられない私は裸足で舞う

 じゃあ、私もそろそろお邪魔して…なんて思っていると、桃の木に佇んでいたらしい一羽の鳥が鳴きだした。

 その音に反応した彼がこちらを振り向く。

 あ…終わったわ。

 目が合った瞬間にそう感じた。


「いたのか皇后。」


 目を逸らす彼。

 やっぱり、私は彼にとって迷惑をかけていたり気を遣わせているのだろうか?


「すみません。偶然通りがかったら聞こえてしまい…。」

「そうか。最近は散歩をしているようだな。」

「はい。」


 頷きながらも疑問に思った。

 なんで私が散歩をしているのを知っているのだろうか?

 私が散歩をしているのはあまり知られていないはずなのに。


「春といえどまだ寒い。風邪を引かぬように。」

「はい。」


 あれ、少し雰囲気が柔らかい?

 今なら言っていいんじゃない?


「.............あの、陛下。私は別の妃を迎え入れて良いと思います。それに、飽きたら捨てるなり…。」


 よし、言った。

 ついに言った。

 これで彼は別の妃を迎え入れやすくなるはず…。


「は?」


 さっきの部下より怒気が含んだ低い声と氷柱のような視線が私を射抜く。


「つまり、皇后は我以外の男に嫁ぎたいと?」

「いえ、私はただっ…。」

「そんなの許さぬぞ。」


 ……なぜ。


「我が皇后を捨てるということは、部下に下賜をする決まりだ。分かったなら我の前でそのような話をするな。」


 そう言い残して彼は一度もこちらを振り向きもせずに去って行った。