俺は、駅のトイレに入った。誰にも見つからないように、かぎ針編みで作ったニット帽を被って、お気に入りのトートバッグを鞄から出しニンマリ笑った。
「よし!と」俺は、可愛い物・毛玉に取り憑かれたニッター。もふもふ、ふわふわ、ファンシーな物が好き。
俺の癒やし、お世話になっているカフェ兼、毛糸専門店『mofomo』。
「あっ! りゅうくん、いらっしゃい」
可愛いってこういう人のことをいうのだと思う。ここの店主、由麻さんが俺の顔を見てにっこり笑った。
「……こんにちは」
「帽子出来たんだ…似合ってる」
由麻は、背伸びして俺の被っているニット帽をいいねと褒めてくれた。
「ありがとうございます」
「ゆっくり見てって」由麻は、毛糸を入れるカゴを差し出した。
俺は、首を縦に振りカゴを受け取った。気になっていたパステルカラーの毛糸を何個かカゴの中に入れた。
店の外から店内を覗く人物が目に入った。顔を背けたが、気付かれ手を振ってきた。
「ましろちゃ〜〜ん」
星野! なんでいんだよ!
「え? りゅうくんお友達?」カウンターにいた由麻が、嬉しそうに微笑んだ。
「そうでーーす。星野」
「違います!」俺は、星野を押し退け会計を済ませた。
「また来てね」由麻は、俺に無視されてる星野を見て困惑しながら手を振った。
俺は、まだ居る星野を店の外に押し出した。
「……なんなだよ」俺は、上から星野を睨んだ。
「なんか、ましろちゃん追っかけてたらここに入ってったから」星野は、臆する事なく応えた。
はぁ? 付けてきたってこと?
「揶揄って楽しいかよ……」
「揶揄ってねぇって」
「よ〜〜……まひろじゃねか。この前はよくもやってくれたなぁ」
見るからに不良と呼ばれる二人が、こちらに寄ってくる。オールバック金髪の男は、星野に近付き胸ぐらを掴んだ。ここは、俺にとって大事な大切な店の前だ。
やめてくれ!
「……(俺の)神聖な場所を汚すな!」俺は、星野を掴む男の腕を掴み睨んだ。
「んっだと〜〜こらぁぁ!」
俺は、男の攻撃を無意識に避けていた。星野は「や〜〜るぅ!」といい、俺の腕を掴んで走り出した。そして、あるアパートの前で足を止めた。

