今日は、俺にとっての大切な時間。とある店からの帰り道。路地裏で何やらもの騒ぎの声がした。
「この野郎!」
「……うるせぇな、誰も睨んでねぇ〜〜だろう。自信過剰か」
「んっだと! てぇめ〜〜!」
男同士で争う声が聞こえる。見る気はなかったが、圧倒的に強い方の男が俺と同じ制服で、俺より随分、身長が低く幼い顔をしていた。
いやいや、見ている場合じゃない。俺は、取り敢えず、関わらないように逃げようとした時、ものすごい勢いで飛んできた何かとぶつかった。それが人だと気付き、押し退けて立ち上がった。その足元に、ニットで作られたミニくまマスコットの無惨な姿を見付けて____
「……大丈夫か?」童顔男が話しかけてきた。
「おい、まだ終わってねぇ〜〜ぞ!」
「……くま子に! なにすんだ!」
無惨なくま子(ミニくまのマスコット)を守りたい一心で、姉の花音伝授、空手(黒帯)奥義ぐーを打ち込んだ。それが相手に見事命中。
「……あ」我に返った俺は、くま子を拾い両手で包んだ。
「お、マジか……」隣にいた童顔男が話しかけてくる。
「どこ行きやがった!」
「……チッ、こっち来て」
俺の腕を掴んで童顔男が走り出した。ある路地に入り、追手ってくる奴らをやり過ごした。
「おまえ、つえぇなぁ……っ!」
童顔男の口が切れ血が滲んでいた。俺は、トートバックから薄ピンクのハンドタオルを出して、童顔男の口元を拭いた。
「……あ、これ使えば」
童顔男は、礼をいい、タオルで口元を拭いた。そして、俺の手から落ちたくま子を拾って、はははと楽しげに笑い「何これ…可愛い……」と言ってまた笑う。俺は、それを奪い取り全力で走って逃げた。

