ターニングポイント『琥珀の章』 ~僕をわがままにした君~

気まずい…

「危ない!!」

ドサッ

「なんですか?」
「すみません!大きな石が足元にあって。気づいていないようだったので…」
「そう、ありがとう」
「本当にすみませんでした」
「助けてくれたんでしょう?もう謝らないでください」

やってしまったーー石を踏みそうだったから、手を引いたら勢い余って、ゆっゆっ床ドンしてしまうなんて!めっちゃ軽かった…。


こんな静かなところに人がいるのかな?

「つきました」
「ここが…」

あの床ドン以降一言も話さなかった…。

「ここは私が住まわせてもらってる施設なんだ」
「なぜ僕をここに?」
「住んでるところを探してるんですよね?」
「そうですけど…」
「一番近くて安いところです。ここは私の母の友達がやっている帰る場所がない子供たちのための施設です。ここならお金もかかりませんし、条件にぴったりなんじゃないですか?」
「でも…」
「とりあえず入ってください」
「失礼します…」

本当にいいのだろうか?あの人たちに見つかったらこの人まで巻き込んでしまう…。玄関に靴がたくさんある。幸さん以外の人も…?

「ここに座って」
「はい。失礼します…」
「家族は?」
「血のつながりだけで言うなら両親と養父母がいます。僕を僕として見てくれるのは祖父母だけです」
「そう。養父母はどんな方なの?」
「僕の信頼できる優しい人たちです。父の名前は虎牙(たいが)といい、名前の通り、強くかっこいい人です。僕の憧れです。母の名前は(りん)といい、凛としていて温かい人です。二人とも怒るととても怖いですが、僕のことを考えていろんなことを教えてくれました。僕の名前も二人がつけてくれました。遠くに住んでいて、最近は会えてないんですよね…」
「いい人たちだね。琥珀って名前はお父さんの名前からとったってこと?」
「はい。琥珀にすると言ってきかなかったみたいです。あと、僕の目、少し色素が薄くて茶色なんです。二人が僕を初めてみた時、綺麗な琥珀色だと思ったみたいです」
「いい名前ですね。琥珀って虎と白に王?」
「はい。そうですけど、何かありましたか?」

名前がまずかった?声とかで、ばれて…。

「いや、おじいさんと同じ虎にしなかったんだなって思って。ごめん、今の失礼でしたよね」
「いえ、僕も思って言ったことがあるんです!祖父は恥ずかしがって教えてくれなかったんですけど、祖母が教えてくれました。僕は生まれたばかりのころ体が弱くて、なかなか退院できなかったみたいで、健康の神とも呼ばれる虎のように強く、賢い子になってほしい。だから元々は虎白でこはくの予定だったみたいなんですが、母が自分の漢字にも入ってる王もつけたいと言って琥珀になりました。僕、自分の名前が大好きなんです。大好きな人たちからもらった一番最初のプレゼントですから」
「いい話。私、幸せって書いて、ゆきって読むんだけど、昔はよく、さちって間違われてたの。それが嫌で、幼かったから両親にもっと可愛い名前がよかった!って怒ってた。けどね、お父さん、温雪(あつゆき)からもらった温かい雪。お母さん、美幸(みさち)からもらった美しい幸せ。この二つが込められてる名前だと知って大好きになったの」
「素敵なお名前ですね」
「でしょ?」

ドキッ

不意打ちの笑顔はずるい…

「じゃあ今からここのルールについて説明するから聞いて」
「はい」

あっ戻ってしまった…

「1つ目は、後で役割を決めるんだけど、その役割を忘れずにやること。2つ目は、出かけるときは施設の誰かに必ず言うこと。3つ目は18時には帰ってくること。4つ目は、みんなでご飯を食べること。帰りが遅くなる時や、ご飯を外で食べる場合は18時までに連絡してください。お小遣いは必要な時に必要な分渡すから言ってください」
「それだけですか!?」
「細かいことは都度いうけど、一旦これだけ。質問とかないですか?」
「あっ…」
「なにかありました?」

これを言って断られたら…いや、でも、後から伝えて追い出されるぐらいなら。

「実は、突発性難聴で左耳が聞こえなくなっています。右耳も聞こえにくくなっています。こんな僕でもここにいていいですか?」
「わかった。施設長には私から伝えます。心配しなくても大丈夫ですよ。目が見えない私でもここにいていいと言ってくれる人ですから。使ってもらう部屋には後で案内します。必要なものがあったらまた言ってください。まずはご飯。私は用意するので、2階にいる他の子たちを読んできてもらってもいいですか?」
「あっ施設長ってどこにいらっしゃるんですか?」
「今は出張中。挨拶はまた帰ってきてからで大丈夫。そこが階段。気を付けてくださいね」

気を付けてね?ペットでもいるのだろうか?あっ名前聞くの忘れてた!