未来へ広がる、中九州の空

……眩しい光で目が覚める。視界の中に、白い日差しが射し込んできた。

目を擦りながらスマホを覗くと、朝の6時。

(何、これ……)

はっと起き上がると、驚くほど、背中が軽い。これまでの疲れが一気に取れていた。



「あぁ、目、覚めた? おはよう」
「……おはようございます……わたし、寝ちゃったんですか?」

「そうねぇ。部屋に着いた途端、ぐっすりだったよ」

キャリーケースを整理するお母さん。視線は向けずに、笑いながら言った。

(そっか……帰るんだ)

「わたしも準備しないと……」

ぐぐっと伸びをして、ベッドから起き上がる。カーテンの隙間から入り込む日差しが眩しい。

「うわぁ……良い天気だけど……今日も暑そうだな」

カーテンを開けると、昨日行きそびれた熊本城。まるで街の一部になっているかのよう。

「どうだった? 横浜と全然違うでしょ。熊本」
「あ、はい……もう、本当に。もっと色々な所に行きたいです」

「暑いのさえ、何とかなればね。自然豊かで、凄く良い所だよ」
「ですよね……本当は阿蘇とか行ってみたかったですもん」

わたしもキャリーケースを開けて、服の整理を始める。お母さんは鏡の前で、髪をセットしているらしかった。

「……今度、来たら良いよ」

ドアの向こうから聞こえてきた、お母さんの声。遮られてしまって、全部は聞き取れなかった。

「えっ? 何ですか?」

ドアを軽く開いて、洗面所にいるお母さんに声をかけた。

「ん? また来たら良いよって」
「あっ……はい」

「翔太と」
「えっ?」

「次は、翔太と2人で、来たら良いんじゃない? 熊本に」

「……ちょっと……」
お母さんから思いもよらない言葉を聞いて、朝からわたしはどきりとしてしまった。

「まぁ……」と濁して、急いでキャリーケースへと戻った。

「お似合いだと思うよ、2人とも」

後ろから、追い打ちをかけるように……お母さんが呟いていた。

――

街中を抜けて、バス停に向かって歩く。朝の7時過ぎなのに、すでに30度を超えているらしい。ゆっくり歩かないと、背中に汗をかいてしまう。

「終わっちゃうね、熊本」

肩にかけていたカバンを地面に下ろして、翔太に話かけた。本当はもっと2人きりで話をしたかったけれど……

もし、お母さんの言う通り、2人で来れるのなら。

「な。暑かったけどね。楽しかったな」

バス停にアナウンスと共にリムジンバスが入ってきた。カバンを預けて、わたし達はバスへと乗り込んだ。

「今度は天守閣まで登ろうよ。熊本城」
「えっ……? あ、あぁ。そうだね。登りたいな」

わたしの言葉に、窓の外を見ながら答える翔太。ちょっとぎこちなさそうに見える。

お母さん達はちょっと遠くに座った。バスの中での……2人の時間。

「真帆」
「ん? 何?」

「……また、来ようよ。熊本」

鼻を人差し指で、少し掻きながら、恥ずかしそうに翔太が言ってくれた。

「……うん。来たいな。一緒に」

さっきまで高いビルばかりだった、窓の景色。

阿蘇熊本空港へと向かうバス。いつの間にか、緑豊かな田舎の風景に変わりつつあった……。


◆第3章を飛ばして、第4章へ