後宮妃のシャープな日常

「君を後宮に招いたのは、後宮内でして欲しいことがあったからだ。決して、そういう意味ではない……と言ったら、かえって失礼か」

「え?」

「おい、ウォレイだけ残して後は下がれ。ホーレイもだ」

「御意」

 陛下が支持を出すと、使用人たちは下がっていった。

「こちらは、側付きのウォレイだ」

 陛下がそう言うと、ウォレイと言われた青年は、頭を下げていた。

「口が堅いから安心していい。さて、何から話したものか……」

「陛下?」

「君を呼んだのは、第一夫人であるフィリンと話して欲しかったからなんだ」

「ここだけの話、私達が閨を共にしたことはない」

「え?」

「第一夫人だけでなく、第二第三夫人とも、そういう関係になったことがない」

「ええ?」

 陛下が第一夫人を娶ってから、二年たっている。その間に、何もなかったということだろうか……。

「忙しくて公務を続けている内に、その……使いものにならなくなってしまってね」

 そう言った陛下は、自分の下半身を見ていた。

「こういった話を、子供の姿の君にするのは気が引けるんだが……」

「構いません。同い年です」

 陛下の悲壮な姿に、私は何も言えなかった。

「第一夫人とは、会ったことがあるんだ。入内した時に……」

「その時だけですか?」

「夜になって部屋へ行ったら、彼女に拒まれてしまってね。どういうことなのか、話を聞いてみると、どうやら他に好きな人がいるみたいなんだ」

「もしかして、その時から……その、使いものにならなくなった?」

「ああ。しかも、第二夫人と第三夫人とは会ったこともない。彼女たちは、どうやら第一夫人であるフィリンに気を遣っているようなんだ」

「そうでしたか……しかし、なぜその話を私に?」

「君は同い年なのに、見た目が幼く見えるし……彼女の傍にいたら、彼女も心を許して何かを話してくれるんじゃないかと思ってね」

「事情は分かりましたが、まさかそのために私を後宮に呼んだのですか? 断ったら、どうするつもりだったのですか?」

「……すまない。事情が事情なだけに、他の人に言えなかったのだ。君のことは、学友であるシモンから話を聞いていたからね。呼べば、引き受けてくれると思った」

「シモン先生に?」

「君はシモンのことが好きだろう。話を聞いていて気がついたよ。もっとも、話をしていた当人は気がついてなかったみたいだけれど」

「ええ?!」

 確かに私はシモン先生のことが好きだった。どちらかと言えば、彼の作る魔術の方が好きだったのだが、気がついたらシモン先生のことも好きになっていた。自分でも、なんであんな魔術オタクを好きになったのか、不思議で仕方がないと思っていた。