勝手に覗いて幻滅すんなよ

 学校を出てスマホを見ると、もう十九時半を回っていた。日の入りも早くなったのか、外はかなり薄暗い。

 それでもまだ蝉の鳴き声が聞こえるのだから、変だなと思う。

 珍しく鼻歌を歌って帰った。ここ最近は色々と大変だったから、全部丸く収まった今は、やけに気分が明るい。

 夜道を歩きながら、来週のテストのことを思い出す。ほとんど無意識に横渕先生に連絡を送ろうとして、ふと手を止める。

 「うーん……」

 胡桃は一人小さく唸る。そして、ややあってからメッセージを送信した。

 【いつも通り、よろしくお願いします】

 みんなは変わったんだろうけれど、結局自分は変われなかったということだろう。

 本当、私はまだまだ駄目な人間だ。

 今度、みんなに相談してみようか。

 変わっていくみんなを見て、羨ましくなったのは事実だ。だから、胡桃もいつかは変われたらいいなと思う。

 玄関を開ける。暗い廊下の電気をつけて、靴を脱ぐ。リビングのソファに鞄を投げ置き、そのまま自分もソファに身体を沈めた。

 しばらくそのままスマホをいじっていると、微睡みに襲われる。

 ご飯は最悪食べなくてもいいけど、お風呂は入らなきゃな。そう思っても、スマホを手放せなかった。

 久しぶりに自分のスマホが戻って来たのだ。つい、いつも以上に()(せい)でいじってしまう。

 「あっ、そうだ。あれ、消さなきゃ」

 胡桃がみんなに自らの秘密を暴露したのには、ある理由があった。本当に知られたら困るものを見られないように、みんなの意識を誘導するためだ。

 胡桃の一番バレたくなかった秘密は、横渕先生との関係のことじゃない。

 写真フォルダを開き、ロックのかかったフォルダのパスワードを打ち込む。

 ぱっと画面に写真が並んで表示された。それは、先日捨ててしまった日記を一ページずつ写真で残したものだ。胡桃のものと、死んでしまった兄のもの。二つとも一日たりとも飛ばすことなく保存しておいてある。

 だって、これは胡桃と兄が戦い抜いた証だから。

 この日記が、胡桃にはみんなに知られてはいけない一番の秘密だった。また今回みたいにスマホが入れ替わるなんてことがあって、これを見られたら困ることになるかもしれない。だから、名残惜しいけど消してしまうとしよう。

 最後の一ページは、みんなのスマホが入れ替わる三日前だった。そこに(つづ)られた内容を見て、あの日を思い出す。