勝手に覗いて幻滅すんなよ

 愛してほしかったはずなのに、愛を受け入れられない人間だった。つまり、織音を愛さなかった両親は正しかったのだ。

 もしも両親が初めから愛情を注いでくれていたら、こんな風にならなかったなんて確証はどこにもない。それなら、織音は生まれつきこういう人間だ、と言われた方がしっくりきてしまう。

 誰かに合わせて生きることが、織音には難しい。それなら、最初に明言しておけばいいだけだ。自分はこういう人間で、何が好きで、何が嫌いか。実に合理的で、人間関係で苦労することは随分と減った。

 もちろん、みんなに同じ説明をするわけじゃない。だけど、名前では呼ばないでほしい、恋愛は大嫌いです。この二つだけは毎回のように口にしていた。

 話したこともないのに好意を向けられることはしばしばある。でも、それは仕方がない。一目惚れという言葉がこの世に存在するのは、そういう人がいて当たり前ということだからだ。

 人の当たり前に、自分の当たり前が流されなければいいだけ。それだけで、織音は自分の世界を保ったまま、外の世界と繋がることが出来る。友達という枠からはみ出さなければ、異性でも、同性でも関係ない。わがままかもしれないが、友達は最低限欲しかったのだ。

 しかし、明け透けなく話す性格になってからというものの、些細な代償として人付き合いが難しく感じるようになった。どうやら、出会って間もない頃に自らの受け入れがたいものを話すのは、壁をつくっていると思われるらしい。そうじゃないのに。

 友達として好きになってくれればいいだけで、そこに恋愛感情を見出さないのって、そんなに難しいことなのだろうか。人に愛情を抱けない織音には、到底分からないことだった。

 クラスの女子にナルシストと言われたことがある。どうやら、その子が好きだった男子が、織音のことを好いているらしい。だから、嫌みのつもりで言ったのだろう。

 「自分を好きになれないで、どうして他人を好きになれるの?」

 問いただしてみたら平手打ちをもらったから、織音も迷わずグーでやり返した。全く、とんだとばっちりだ。

 人からの愛を正常に受け入れられないのだから、自分で愛してあげるしかないじゃないか。そんなことをいちいち説明したって、どうせ誰も分かってくれやしない。