日を追うごとに、嘘を吐くことがどんどん増えていった。そのことに、自分で困惑する。
頭の中で浮かぶ言葉が、やけに汚い感情を孕んだものばかりで、綺麗な嘘で塗りたくる毎日。
事故以前と、明らかに何かが違った。事故で気を失った際に、別の人格が燿を乗っ取ってしまったみたいに、気持ちの整合性が取れない。
人の幸せを祝いたい燿と、妬む燿の両方が存在している。そして、前者が日に日に薄れて、汚い自分に呑み込まれていく。
黒い絵具がたった一滴、燿の人生に垂れてしまったのだろう。赤色や黄色、青色。色彩鮮やかなそれらが黒色に勝てないことくらい、子供にだって分かることだ。
ゆっくりと、ゆっくりと、黒色が燿を染め上げていく。そのことが、堪らなく恐ろしい。
いつの間にか、上辺だけで話すことが当たり前になった。そうしないと、嫌な自分が顔を出してしまうから。
意識しないと、すぐにネガティブなことを言いそうになる。やっぱり、事故以前の自分は相当に性格が良かったらしい。
恵まれていたはずの人生が、たった一度の事故で壊れてしまった。
もう二度と、激しい運動は出来ない。捻じ曲がった性格も、きっと治らない。完璧に幸せだったあの頃には、どうやったって戻れない。
一体、どうしてこんなことになってしまったのだろう。誰が、悪かったのだろう。
あの馬鹿たちが悪いのは当たり前。でも、自分は本当に悪くなかったと言えるのか。あの時、飛び込んでくる自転車の進路にいたのは龍之介だ。燿は何をしなくとも、ぶつかりはしなかった。
もしも燿が龍之介を押し退けず、そのまま彼が被害者になっていたら、ガタイのいい龍之介は燿のような怪我をしなかったかもしれない。誰も傷付かない選択肢が、他にあったかもしれない。
そんな中で、僕の取った行動は本当に正しかったのか。――今となっては、間違っていたと言える。
誰かを助けて、自らが不幸を背負う。美談という綺麗な言葉で片付けられるわけがない。
どうして、自分がこんな目に遭わないといけないのだろう。
幸せそうにする人たちを外側から眺めることがこんなにも苦痛だったなんて、知らなかった。
清く生きてきたのに、なんでこんなに汚れなくちゃいけないのだろう。
返してくれ。
「僕の人生を、返してくれ」
僕は幸せになるべきだろ。だって、おかしいじゃないか。
でも、この後遺症と性格のせいで、もう完璧な幸せにはどうしたってなれない。
誰もかれも、生きるのが下手くそだ。
だから、僕は自分よりも幸せな人たちが、赦せない。
頭の中で浮かぶ言葉が、やけに汚い感情を孕んだものばかりで、綺麗な嘘で塗りたくる毎日。
事故以前と、明らかに何かが違った。事故で気を失った際に、別の人格が燿を乗っ取ってしまったみたいに、気持ちの整合性が取れない。
人の幸せを祝いたい燿と、妬む燿の両方が存在している。そして、前者が日に日に薄れて、汚い自分に呑み込まれていく。
黒い絵具がたった一滴、燿の人生に垂れてしまったのだろう。赤色や黄色、青色。色彩鮮やかなそれらが黒色に勝てないことくらい、子供にだって分かることだ。
ゆっくりと、ゆっくりと、黒色が燿を染め上げていく。そのことが、堪らなく恐ろしい。
いつの間にか、上辺だけで話すことが当たり前になった。そうしないと、嫌な自分が顔を出してしまうから。
意識しないと、すぐにネガティブなことを言いそうになる。やっぱり、事故以前の自分は相当に性格が良かったらしい。
恵まれていたはずの人生が、たった一度の事故で壊れてしまった。
もう二度と、激しい運動は出来ない。捻じ曲がった性格も、きっと治らない。完璧に幸せだったあの頃には、どうやったって戻れない。
一体、どうしてこんなことになってしまったのだろう。誰が、悪かったのだろう。
あの馬鹿たちが悪いのは当たり前。でも、自分は本当に悪くなかったと言えるのか。あの時、飛び込んでくる自転車の進路にいたのは龍之介だ。燿は何をしなくとも、ぶつかりはしなかった。
もしも燿が龍之介を押し退けず、そのまま彼が被害者になっていたら、ガタイのいい龍之介は燿のような怪我をしなかったかもしれない。誰も傷付かない選択肢が、他にあったかもしれない。
そんな中で、僕の取った行動は本当に正しかったのか。――今となっては、間違っていたと言える。
誰かを助けて、自らが不幸を背負う。美談という綺麗な言葉で片付けられるわけがない。
どうして、自分がこんな目に遭わないといけないのだろう。
幸せそうにする人たちを外側から眺めることがこんなにも苦痛だったなんて、知らなかった。
清く生きてきたのに、なんでこんなに汚れなくちゃいけないのだろう。
返してくれ。
「僕の人生を、返してくれ」
僕は幸せになるべきだろ。だって、おかしいじゃないか。
でも、この後遺症と性格のせいで、もう完璧な幸せにはどうしたってなれない。
誰もかれも、生きるのが下手くそだ。
だから、僕は自分よりも幸せな人たちが、赦せない。



