勝手に覗いて幻滅すんなよ

 自分は恵まれた人間だ、という自覚が中学一年の燿にはある。

 何不自由ない家庭に生まれ、外見にも十分過ぎるほど恵まれた。勉学は多少不得意だったが、ちゃんと対策をすれば学年の平均以上は取れる。

 性格も、別に悪いわけじゃないと思う。自分を卑下(ひげ)することなく認めることが出来て、だけど(おご)ることはないし、見知らぬ人ともコミュニケーションを取れる。誰かのことを悪く言うのは得意じゃないし、むしろ長所を真似したいという向上心の方が強い。

 そういうわけで、生まれて十三年間、燿は特に何かに困ったことがなかった。

 広い交友関係を持ち、恋人もいて、そこそこの成績を保ち、大好きなバスケに(まい)(しん)する。この生活が、ずっと続けばいいと思う。

 中一で考えるには早いかもしれないが、高校でもバスケ部に入る予定なのだ。少なくとも、あと数年はこの素敵な日々を過ごせる。

 大学に進学したら、新しいことに挑戦してみるのもありかもしれない。アルバイトをしてみたり、運動は好きだからバスケ以外にもやってみよう。最近、カバディの漫画を読んだばかりで、ちょっと興味あるし、足が速い自分にはぴったりかもしれない。

 そんな未来が訪れるのは、恵まれた自分には当たり前のことだと、ちっとも疑わなかった。

 だから、事故で大怪我(けが)をして、もう二度とバスケが出来ないと医者から告げられた時は、山の頂上から転がり落ちる気分だった。