歳の神(さいのかみ)
冬の夜。
雪は昼間から降り続いており、集落の広場は白く均されている。
その中央に、竹と雑木で組まれた骨組みが立ち、
その周囲に稲わらが幾重にも積み上げられている。
さいの神だ、と古老は言う。
骨組みには、
正月飾り、注連縄、門松の松葉、
子供たちの書き初めが、文字の向きも揃えられぬまま掛けられている。
「一月」「家内安全」「うまくなりたい」
墨の濃淡が、雪明かりの中でまだ生々しい。
写真には、
無数の人影が写っている。
子供、大人、老人。
誰が中心ということもなく、
ただ、集まっている。
杉の松明を持った男たちが、
合図もなく藁に火を入れる。
一か所、また一か所。
火は音を立てて走り、
ほどなく、さいの神は大きな炎になる。
雪の降る夜に、
炎だけが季節を間違えたように高く燃え上がる。
顔が赤く照らされ、
誰の表情もはっきりとは写らない。
炎が落ち着いた頃、
子供たちは列を作る。
大人の指が、
燃え残った炭を取り、
子供の額に、無病息災、家内安全を願い、黒い筋を引く。
泣く者はいない。
理由を問う者もいない。
そういうものだと、
誰もが知っている。
「歳の神っちゅうのはな、
正月に来る神様だなんて言う人もいるけんど、
ほんとは、
火の神でもあり、
年の変わり目そのものでもあんだ」
「わら燃やして、
書いたもんも、飾ったもんも、
みんな一緒に焼ぐ。
そうせんと、
年が切り替わらねぇ」
「子供の額さ炭塗るのはな、
病気除けだとか言うけんど、
昔は、
『ちゃんと火を見た証拠』
みてぇなもんだった」
「見ねぇで帰ると、
その年、
ちゃんと年越せねぇ、
そう言われてた」
冬の夜。
雪は昼間から降り続いており、集落の広場は白く均されている。
その中央に、竹と雑木で組まれた骨組みが立ち、
その周囲に稲わらが幾重にも積み上げられている。
さいの神だ、と古老は言う。
骨組みには、
正月飾り、注連縄、門松の松葉、
子供たちの書き初めが、文字の向きも揃えられぬまま掛けられている。
「一月」「家内安全」「うまくなりたい」
墨の濃淡が、雪明かりの中でまだ生々しい。
写真には、
無数の人影が写っている。
子供、大人、老人。
誰が中心ということもなく、
ただ、集まっている。
杉の松明を持った男たちが、
合図もなく藁に火を入れる。
一か所、また一か所。
火は音を立てて走り、
ほどなく、さいの神は大きな炎になる。
雪の降る夜に、
炎だけが季節を間違えたように高く燃え上がる。
顔が赤く照らされ、
誰の表情もはっきりとは写らない。
炎が落ち着いた頃、
子供たちは列を作る。
大人の指が、
燃え残った炭を取り、
子供の額に、無病息災、家内安全を願い、黒い筋を引く。
泣く者はいない。
理由を問う者もいない。
そういうものだと、
誰もが知っている。
「歳の神っちゅうのはな、
正月に来る神様だなんて言う人もいるけんど、
ほんとは、
火の神でもあり、
年の変わり目そのものでもあんだ」
「わら燃やして、
書いたもんも、飾ったもんも、
みんな一緒に焼ぐ。
そうせんと、
年が切り替わらねぇ」
「子供の額さ炭塗るのはな、
病気除けだとか言うけんど、
昔は、
『ちゃんと火を見た証拠』
みてぇなもんだった」
「見ねぇで帰ると、
その年、
ちゃんと年越せねぇ、
そう言われてた」



