「というわけでペアが決まりましたので、一旦お部屋にお入りいただき、荷物の整理および休憩をしてください。夕食は18時より、屋上にて歓迎のバーベキューパーティを行います」
「やったー、バーベキュー!」
イタルさんが、無邪気に飛び跳ねて喜ぶ。
「撮影は明日から本格的に開始していただきます。撮影期間中のお食事は、レストランにて常時バイキング形式でのご提供となります。ですから時間に囚われず、ご自由にスケジュールを組んでいただいて結構です」
レッドツリーホテルとしては、全面的に撮影に協力する態勢のようだ。
部屋割りは、ペア同士が近くの部屋になるよう組まれた。
ミツバさんが3階の一番奥の海が見える部屋で、僕がその向いの森が見える部屋。
部屋に入る直前まで、メイキングのカメラが僕らを追ってくる。
そんなカメラを無視し、ミツバさんが声を掛けてくれた。
「よろしく、中川さん」
「あ、あの。マナトって呼んでもらえると」
「わかった、マナトね」
「はい。よろしくお願いします、ミツバさん」
「俺のことも「さん」は要らないよ。同じ大学3年だし」
「は、はい。では、ミツバくんで、いいかな?」
「いいよ。俺、朝が早かったから寝不足で。少し眠るから、バーベキュー行く前に声をかけてもらえると助かる」
「うん。わかった」
綺麗な顔でミツバくんは欠伸をし、向いの部屋へと入っていく。
見た目はクールだけれど、コミュニケーション能力が高そうな人でよかった。
僕もメイキングカメラのクルーに軽く会釈をし、スーツケースを押して部屋へ入る。
大きな窓の向こうに、すぐに深い森が広がっているのが見え、思わず「うわー!」と声が出る。
部屋も大きく、ベッドも贅沢な大きさだ。
ゴロンと寝転んでみれば、いい寝具が使われていると、僕にでもわかった。
置かれているタオルもフカフカで、これが、レッドツリーホテルのクオリティの高さなのだろう。
—
18時はまだ空が明るい。
日が傾いてからは暑さも一段落し、吹き抜ける海からの風が心地いい。
屋上からは海も、森も一望できた。
用意されていたバーベキューの食材は、かなり豪華だ。
それをコックさんが、炭火で手際よく焼いてくれている。
分厚い牛肉に、脂ののった豚肉。
鶏は骨付きで見栄えもいい。
彩り豊かな野菜も見るからに新鮮で、他にも、エビ、ホタテ、ウインナーと種類豊富だ。
コックさんが言うには、食材は、毎日のように船で配達されてくるらしい。
明日からの撮影に必要であれば、実際に提供可能な範囲で、コース料理や、ランチプレートなども、用意してくれるとのことだった。
「では、お招きいただいたレッドツリーさんに感謝を込めて、かんぱーい!」
サイカワさんが乾杯の音頭をとった。
「かんぱーい」
「よろしく」
「楽しもうな」
5人のYouTuberは、元々、横のつながりがあるらしく、親しげに盛り上がる。
僕らサポートスタッフの5人とも打ち解けようと、積極的に会話に混ぜてくれた。
食事をしながらも、常にメイキングカメラが張り付いている。
普段から撮られることに慣れているYouTuberはともかく、僕らスタッフは無口になりがちだ。
それでも途中からは、同世代らしく話が弾み、カメラの存在は忘れられた。
今回、僕がなぜ、このバイトに応募したかと言えば、やはり報酬額が魅力的だったからだ。
大学に張り紙が貼られたとき、ゼミでも皆「やりたい、やりたい」と噂になった。
『高額報酬【6泊7日】撮影サポートスタッフ5名募集。YouTubeの撮影です。動画への映り込みOKな男性に限る(面接審査あり)。もちろん交通費支給、宿泊や食事は豪華ホテルにて全て提供します』
むしろ条件が良すぎて怪しいんじゃないかと、言う人までいた。
結局、ゼミの中で、このバイトに受かったのは僕だけだ。
そろそろ実家を出て一人暮らししたいと思っているから、この報酬はありがたい。
今、美味しい肉を頬張りながら「参加してよかった」と思っている。
—
もうすぐ夏至を迎える、1年で最も日の長いこの季節。
19時を過ぎ、ようやく日が沈む。
屋上から見る、真っ赤な夕焼けと海への日の入りは、かなりロマンチックで、絵になった。
この1週間は、概ね天気に恵まれそうだ。
きっと、どのYouTuberの動画にも、夕陽のシーンが使われるだろう。
暗くなった屋上には、ランタンがいくつも置かれ、やたらとムーディなオレンジ色の温かい光を放っていた。
さっきまでワイワイしていたYouTuberたちは、いつの間にかそれぞれのペアごとに別れ、早くも撮影の作戦会議を始めている。
バーベキューコンロの横で、満足そうに微笑む藤原さんが目に留まる。
その僕らを観察するかのような姿は、少し不気味に思えた……。
「やったー、バーベキュー!」
イタルさんが、無邪気に飛び跳ねて喜ぶ。
「撮影は明日から本格的に開始していただきます。撮影期間中のお食事は、レストランにて常時バイキング形式でのご提供となります。ですから時間に囚われず、ご自由にスケジュールを組んでいただいて結構です」
レッドツリーホテルとしては、全面的に撮影に協力する態勢のようだ。
部屋割りは、ペア同士が近くの部屋になるよう組まれた。
ミツバさんが3階の一番奥の海が見える部屋で、僕がその向いの森が見える部屋。
部屋に入る直前まで、メイキングのカメラが僕らを追ってくる。
そんなカメラを無視し、ミツバさんが声を掛けてくれた。
「よろしく、中川さん」
「あ、あの。マナトって呼んでもらえると」
「わかった、マナトね」
「はい。よろしくお願いします、ミツバさん」
「俺のことも「さん」は要らないよ。同じ大学3年だし」
「は、はい。では、ミツバくんで、いいかな?」
「いいよ。俺、朝が早かったから寝不足で。少し眠るから、バーベキュー行く前に声をかけてもらえると助かる」
「うん。わかった」
綺麗な顔でミツバくんは欠伸をし、向いの部屋へと入っていく。
見た目はクールだけれど、コミュニケーション能力が高そうな人でよかった。
僕もメイキングカメラのクルーに軽く会釈をし、スーツケースを押して部屋へ入る。
大きな窓の向こうに、すぐに深い森が広がっているのが見え、思わず「うわー!」と声が出る。
部屋も大きく、ベッドも贅沢な大きさだ。
ゴロンと寝転んでみれば、いい寝具が使われていると、僕にでもわかった。
置かれているタオルもフカフカで、これが、レッドツリーホテルのクオリティの高さなのだろう。
—
18時はまだ空が明るい。
日が傾いてからは暑さも一段落し、吹き抜ける海からの風が心地いい。
屋上からは海も、森も一望できた。
用意されていたバーベキューの食材は、かなり豪華だ。
それをコックさんが、炭火で手際よく焼いてくれている。
分厚い牛肉に、脂ののった豚肉。
鶏は骨付きで見栄えもいい。
彩り豊かな野菜も見るからに新鮮で、他にも、エビ、ホタテ、ウインナーと種類豊富だ。
コックさんが言うには、食材は、毎日のように船で配達されてくるらしい。
明日からの撮影に必要であれば、実際に提供可能な範囲で、コース料理や、ランチプレートなども、用意してくれるとのことだった。
「では、お招きいただいたレッドツリーさんに感謝を込めて、かんぱーい!」
サイカワさんが乾杯の音頭をとった。
「かんぱーい」
「よろしく」
「楽しもうな」
5人のYouTuberは、元々、横のつながりがあるらしく、親しげに盛り上がる。
僕らサポートスタッフの5人とも打ち解けようと、積極的に会話に混ぜてくれた。
食事をしながらも、常にメイキングカメラが張り付いている。
普段から撮られることに慣れているYouTuberはともかく、僕らスタッフは無口になりがちだ。
それでも途中からは、同世代らしく話が弾み、カメラの存在は忘れられた。
今回、僕がなぜ、このバイトに応募したかと言えば、やはり報酬額が魅力的だったからだ。
大学に張り紙が貼られたとき、ゼミでも皆「やりたい、やりたい」と噂になった。
『高額報酬【6泊7日】撮影サポートスタッフ5名募集。YouTubeの撮影です。動画への映り込みOKな男性に限る(面接審査あり)。もちろん交通費支給、宿泊や食事は豪華ホテルにて全て提供します』
むしろ条件が良すぎて怪しいんじゃないかと、言う人までいた。
結局、ゼミの中で、このバイトに受かったのは僕だけだ。
そろそろ実家を出て一人暮らししたいと思っているから、この報酬はありがたい。
今、美味しい肉を頬張りながら「参加してよかった」と思っている。
—
もうすぐ夏至を迎える、1年で最も日の長いこの季節。
19時を過ぎ、ようやく日が沈む。
屋上から見る、真っ赤な夕焼けと海への日の入りは、かなりロマンチックで、絵になった。
この1週間は、概ね天気に恵まれそうだ。
きっと、どのYouTuberの動画にも、夕陽のシーンが使われるだろう。
暗くなった屋上には、ランタンがいくつも置かれ、やたらとムーディなオレンジ色の温かい光を放っていた。
さっきまでワイワイしていたYouTuberたちは、いつの間にかそれぞれのペアごとに別れ、早くも撮影の作戦会議を始めている。
バーベキューコンロの横で、満足そうに微笑む藤原さんが目に留まる。
その僕らを観察するかのような姿は、少し不気味に思えた……。



