「ところで……」
あの金髪のYouTuber「ミツバ」が挙手をし、話し始める。
「あのカメラは何ですか?さっきからずっと、俺たちのことを撮っているみたいですけど」
藤原さんは、胸を張って説明を始める。
「ご説明が遅くなり、大変申し訳ございません。皆さんがこの島で奮闘される様子を、私が手配いたしました撮影クルーが記録し、メイキング映像としてショート動画にさせていただきます」
「それは、青春群像劇のような感じに仕上げるんですか?」
「はい!そうです。まさにそういう動画を予定しております。リサーチにリサーチを重ね、どのようなショート動画が今回の企画と相性が良く、多くのビューを獲得できるか検討いたしました」
よほど自信があるのか、藤原さんのテンションが上がる。
「皆さんの YouTube動画への誘導として、公式SNSより配信予定となっております」
その言葉を「ふーん」と聞き流すYouTuberたちの顔も、カメラマンは逃さず撮影していた。
「私どもとしましては、とにかく、世間の目を向けたいのです。ありとあらゆる手段を使ってでも……」
藤原さんの気迫に満ちた必死さが、伝わってくる。
「ショート動画でまずバズリ、再生回数を増やして、増やして、認知していただかないことには、当ホテルとしましても、なにも始まりませんので!」
「……いかにも広告屋って感じ」
藤原さんに聞こえぬ小さな声で、ミツバさんが悪態をついた……。
—
今回参加しているYouTuberは、全員がフォロワー数20万人を超える中堅どころだ。
いや、大学生としては充分に成功者といえるだろう。
中でも一番人気は「サイカワ」。
企画力が抜群で「〇〇しないで1日過ごす」や「〇〇だけで〇〇を作ってみた」で、お馴染みらしい。
今回も誰も予想しない企画を企てそうだ。
次にフォロワー数が多いのが、金髪で一番背の高い「ミツバ」。
得意分野はフェイクドキュメンタリー。
彼自身が「演者」であり、ミツバの魅力で再生回数を回しているといっても、過言ではない。
堅実な動画が人気なのは「ユーキ」。
おそらく王道のPR動画に仕上げてくるだろう。
サークルで利用したら、海でこんな遊びができる、森であんな楽しみ方もできる、と提案力に優れているはずだ。
それから、地理と歴史に詳しい「イタル」。
喋りが達者で、底抜けに明るい上に、知識が豊富。
島を探検しながら、地形などについて語らせたら右に出るものはいない。
最後は「ナーゴ」。
植物や生物について詳しく、とくに虫がめちゃくちゃ好きらしい。
昆虫採集が趣味で、今も虫取りアミを片手に持っている。
……以上のことは、事前に配布された資料で知った。
僕は映画やドラマは好きだけれど、動画投稿サイトには疎いのだ。
そういう意味でも、今回はいい勉強になりそうだ。
「えーでは、あみだくじの前に、学生サポートスタッフから簡単な自己紹介を」
右端から1人ずつ喋り始め、僕の順番が回ってくる。
「大学3年、中川マナトです。映像学科なので撮影機材は扱えます。力仕事はあまり得意ではありませんが、頑張ります。他ではできない経験をしたいと思って、今回このバイトに応募しました。よろしくお願いします」
パチパチと、ささやかな拍手が起こり、次の学生スタッフへ皆の視線が移っていく。
5人の自己紹介が終わったところで、ユーキさんが大きな声で感想を述べる。
「ねぇ藤原さん、このスタッフさんたち、顔で選んだの?みんな格好良くてびっくりなんだけど」
確かに……。
僕以外、みんなビジュアルがいい。
「それは、フフ。ご想像にお任せしますわ」
藤原さんは、なぜか勝算を得たようなドヤ顔をした。
—
廊下に置かれていたホワイトボードが、ラウンジに運び込まれてくる。
そこにはすでに5本の縦線と、数本の横棒が書き込まれていて、下のほうが隠されていた。
「YouTuberの皆さんは、お好きな場所に名前を書き、合わせて横棒を1本足してください」
僕ら5人のスタッフは、選ばれるのを待つのみだ。
頭の中で、誰に当たったらうれしいだろうと考える。
虫はそんなに得意ではないから、ナーゴさんは勘弁してほしい。
サイカワさんは無謀な撮影が多そうだし、イタルさんは歩く距離が多そう。
ユーキさんが無難かな、と思いながらも、僕はクールな顔でホワイトボードを見ている金髪のミツバさんを、盗み見てしまう。
彼は横顔も、驚くほど綺麗だ。
「では一番左端にお名前を書かれた、ミツバさんから」
藤原さんが、赤いマジックであみだくじをなぞっていく。
「ミツバさんとのペアは、中川さんになります。あー、いいですね。うん、いい組み合わせです」
ミツバさんが僕を見た。
ペコリとお辞儀をした僕を、彼はただクールに見つめ返した。
あの金髪のYouTuber「ミツバ」が挙手をし、話し始める。
「あのカメラは何ですか?さっきからずっと、俺たちのことを撮っているみたいですけど」
藤原さんは、胸を張って説明を始める。
「ご説明が遅くなり、大変申し訳ございません。皆さんがこの島で奮闘される様子を、私が手配いたしました撮影クルーが記録し、メイキング映像としてショート動画にさせていただきます」
「それは、青春群像劇のような感じに仕上げるんですか?」
「はい!そうです。まさにそういう動画を予定しております。リサーチにリサーチを重ね、どのようなショート動画が今回の企画と相性が良く、多くのビューを獲得できるか検討いたしました」
よほど自信があるのか、藤原さんのテンションが上がる。
「皆さんの YouTube動画への誘導として、公式SNSより配信予定となっております」
その言葉を「ふーん」と聞き流すYouTuberたちの顔も、カメラマンは逃さず撮影していた。
「私どもとしましては、とにかく、世間の目を向けたいのです。ありとあらゆる手段を使ってでも……」
藤原さんの気迫に満ちた必死さが、伝わってくる。
「ショート動画でまずバズリ、再生回数を増やして、増やして、認知していただかないことには、当ホテルとしましても、なにも始まりませんので!」
「……いかにも広告屋って感じ」
藤原さんに聞こえぬ小さな声で、ミツバさんが悪態をついた……。
—
今回参加しているYouTuberは、全員がフォロワー数20万人を超える中堅どころだ。
いや、大学生としては充分に成功者といえるだろう。
中でも一番人気は「サイカワ」。
企画力が抜群で「〇〇しないで1日過ごす」や「〇〇だけで〇〇を作ってみた」で、お馴染みらしい。
今回も誰も予想しない企画を企てそうだ。
次にフォロワー数が多いのが、金髪で一番背の高い「ミツバ」。
得意分野はフェイクドキュメンタリー。
彼自身が「演者」であり、ミツバの魅力で再生回数を回しているといっても、過言ではない。
堅実な動画が人気なのは「ユーキ」。
おそらく王道のPR動画に仕上げてくるだろう。
サークルで利用したら、海でこんな遊びができる、森であんな楽しみ方もできる、と提案力に優れているはずだ。
それから、地理と歴史に詳しい「イタル」。
喋りが達者で、底抜けに明るい上に、知識が豊富。
島を探検しながら、地形などについて語らせたら右に出るものはいない。
最後は「ナーゴ」。
植物や生物について詳しく、とくに虫がめちゃくちゃ好きらしい。
昆虫採集が趣味で、今も虫取りアミを片手に持っている。
……以上のことは、事前に配布された資料で知った。
僕は映画やドラマは好きだけれど、動画投稿サイトには疎いのだ。
そういう意味でも、今回はいい勉強になりそうだ。
「えーでは、あみだくじの前に、学生サポートスタッフから簡単な自己紹介を」
右端から1人ずつ喋り始め、僕の順番が回ってくる。
「大学3年、中川マナトです。映像学科なので撮影機材は扱えます。力仕事はあまり得意ではありませんが、頑張ります。他ではできない経験をしたいと思って、今回このバイトに応募しました。よろしくお願いします」
パチパチと、ささやかな拍手が起こり、次の学生スタッフへ皆の視線が移っていく。
5人の自己紹介が終わったところで、ユーキさんが大きな声で感想を述べる。
「ねぇ藤原さん、このスタッフさんたち、顔で選んだの?みんな格好良くてびっくりなんだけど」
確かに……。
僕以外、みんなビジュアルがいい。
「それは、フフ。ご想像にお任せしますわ」
藤原さんは、なぜか勝算を得たようなドヤ顔をした。
—
廊下に置かれていたホワイトボードが、ラウンジに運び込まれてくる。
そこにはすでに5本の縦線と、数本の横棒が書き込まれていて、下のほうが隠されていた。
「YouTuberの皆さんは、お好きな場所に名前を書き、合わせて横棒を1本足してください」
僕ら5人のスタッフは、選ばれるのを待つのみだ。
頭の中で、誰に当たったらうれしいだろうと考える。
虫はそんなに得意ではないから、ナーゴさんは勘弁してほしい。
サイカワさんは無謀な撮影が多そうだし、イタルさんは歩く距離が多そう。
ユーキさんが無難かな、と思いながらも、僕はクールな顔でホワイトボードを見ている金髪のミツバさんを、盗み見てしまう。
彼は横顔も、驚くほど綺麗だ。
「では一番左端にお名前を書かれた、ミツバさんから」
藤原さんが、赤いマジックであみだくじをなぞっていく。
「ミツバさんとのペアは、中川さんになります。あー、いいですね。うん、いい組み合わせです」
ミツバさんが僕を見た。
ペコリとお辞儀をした僕を、彼はただクールに見つめ返した。



