HxMx ESCAPE 小説版

「先輩?」

 心配そうな顔で覗き込むゲッカに気づき、カツイはハッと我に返る。

「カツイくん!」

 再びカツイは驚く。見てみると、トバが走ってきていた。何だかとても慌てた様子でトバはカツイに耳打ちをする。
 カツイの鞄を持ってきていたらしく、二個分の帰り支度を持ってきていた。

「えっ!?」

 トバが持っていた鞄を即座に持ち、上着を羽織るとカツイは昇降口に向かって走り出した。廊下の途中で立ち止まると、カツイはくるりと振り返る。

「トバ! 一応あいつに連絡しとけ!! オレは先にあっち行くから!」

 そう言うと、カツイは走っていってしまう。何が起こったのか理由を聞こうとトバを見ると、トバは昇降口の方へ歩きながら携帯電話を取り出した。

「もしもし、今大丈夫ですか? ……はい、あの、ミナリくんが熱を出してしまったらしくて……はい、今カツイくんが向かってるんですけど……」

 相手は誰だか分からないが、電話の相手と『ミナリ』という人物。少なくともカツイとトバの他にもう二人家出人の仲間がいるらしいという事はゲッカにも分かった。ちらりと困ったような目でゲッカを見ると、トバは再び視線を反らす。

「あ、はい、それであの、僕達の事を知っている子が現れたんですけど、どうしたらいいでしょうか……え? でも……はい、分かりました。では、失礼します」
「先輩?」

 トバが電源を切るのと共に、ゲッカはトバに声をかける。また適当にはぐらかされるのかと思いきや、トバはニッコリと微笑んで携帯電話をポケットにしまう。

 「ゲッカくん。あの人から許可が出たよ。『家出人』に入っていいって」
「本当ですか!?」
「うん、行こう」

 『家出人』の仲間に入る事は、『家出する』という事になる。
 それでもゲッカはトバの後についていくのだった。