電脳戦隊ネットレンジャー

 藤馬龍也。ネットレンジャーをまとめるリーダーであるネットレッドの彼だか、気の弱さから中々一つにまとめる事が出来ない。幼い頃から遊び相手は近所の女の子で、その頃から彼は男の子から仲間外れにされ、虐められていた。そしてそれは今も続いていた。

「おはよー、藤馬くん。今日も何かと楽しい一日になりそうだね」

 これがアイツらの朝の挨拶。龍也はアイツらに逆らう事は出来ない。

「あ……おはよ」

 そしてすれちがいざまに、アイツは竜也に小声で言った。

「放課後、屋上に来いよ」

 本当は行きたくなかった。しかし逃げることもできなかった。アイツらはどこにでもいるのだ。親の希望通りの名高い男子校に入学こそしたが、入学直後イジメの標的にされ、毎日地試のような学校生活を送ってきていた。そんな中、ネットレンジャーとしてネットシティにいる事は、竜也にとって唯一の安らげる空間であった。自信もないのにリーダーにまつりあげられ、想と沙弥にはシカトされ、淳に励まされながらここまで成長した竜也は、今日こそついにアイツらの呪縛から逃れる事を決意した。
 授業が終わり、アイツらにバレないように教室を抜け出そうとした竜也の目の前に一人の男が立ちはだかった。

「!!」

 思わず息をのんでその人物を見上げるが、その人物がアイツらの仲間ではない事に竜也はホッとした。彼は七尾。竜也のクラスの学級委員で、竜也をアイツらから守ってくれるたった一人の『知人』だった。
 なぜ『親友』や『友達』でなく、単なる『知人』なのか。これは竜也の頭の中で、七尾に対する気持ちを整理した結果だった。

「どうしたの藤馬くん、もう帰るの?」

 やけに大きい七尾の声で、その事実を教室内にいるアイツらに開かれてしまった。それに気づいたアイツらが、ニヤニヤしながら竜也に近づいてきた。

「あっれ〜? もう帰っちゃうの? 藤馬くん、今日約束してたじゃん」
「約束してたんだ。だめじゃん、藤馬くん忘れちゃ」

 悪気がないのは分かるが、竜也にとってこの七尾の行動は非情に迷惑だった。

「ここじゃ話し辛いから、屋上に行こうか」

 アイツらに促がされるまま、竜也は屋上に連れて行かれた。屋上に着くと、竜也は背中をポンと押され前方に転ぶ。誰かが屋上の鍵を閉める音がした。

「さて、と。さっきは何で逃げようとなんてしたのかな?」

 ここで謝れば、逃げた事は許してもらえる。しかし、その後いつもの様に袋叩きにされる事は分かっていた。当然謝った方が負担は軽くなるのだが、そんな竜也の頭の中に、初めてあの四人と会った時の沙弥の言葉が思い出された。

 ――『もっとハッキリしゃべれよ』

 その言葉から、竜也は少しずつ自分を変えてきたつもりだったが、それはネットシティの中だけだった。ネットシティでいくらゴーヌを倒していても、現実世界の竜也は弱かった。このままではいけないと思いながらも、竜也はアイツらに『ハッキリ』物事を言うことができなかった。きっと沙弥や想ならこう言うだろう。『バカじゃないのか』と。

「ぼ、僕……」
「あぁ?」
「もう、言いなりになんかならない!」

 やっと言えた。その達成感だけで竜也は満足だった。しかしほんの一瞬のうちに竜也はみぞおちに酷い圧迫感を覚え、息ができなくなった。一人の男が竜也の腹を蹴り上げたのだった。
 弱い。自分は……これが自分だ。……何の、力もない。
 すると突然何かに引っ張られる感じがして、竜也の幽体は本体から引き抜かれた。しかし竜也は気絶した訳ではない。意識があるうちに何物かに引き抜かれたのだった。
 動かない竜也に驚いているアイツらを数メートル上空から見下ろしながら、竜也は後ろを振り向いた。すると自分を本体から引に抜いた『物』と視線が合った。

「ゴ……っ!!」

 言い終わらないうちに、竜也の周囲は真っ暗な闇となった。