スレチガイレッドスレッド

帰り道、街灯が一つずつ灯り始めていた。
部活帰りの制服は、もう汗の匂いが抜けている。
りんたろうは、一人で歩いていた。
スマホが震える。
画面を見る。

《ゆうご:今日はありがとう》

短いメッセージ。
それ以上、何も書いていない。
りんたろうは、足を止めた。
返信欄を開いて、閉じる。
——違うな。
代わりに、ポケットにスマホを戻す。
空を見上げる。
雲の切れ間に、まだ少し夕焼けが残っていた。
「……素直すぎだろ」
誰もいない道で、そう呟く。
笑うつもりはなかった。
でも、口元が勝手に緩んだ。
今年知り合ったばかりの友達。
それなのに、こんな顔で感謝されるとは思ってなかった。
——俺、何かしたか?
自分に問いかけて、すぐに答えが出る。

したのは、
逃げ道を塞がなかったこと。
それから、
背中を押したこと。

たった、それだけだ。
「……まあ」
小さく息を吐く。
「悪くないか」
再び歩き出す。
足音が、夜の住宅街に溶けていく。
りんたろうは、
誰にも見られないところで、
もう一度だけ、静かに笑った。
それは、
親友としての役目を終えた人の、
とてもささやかな、
満足の笑いだった。