スレチガイレッドスレッド

でも、
近づいたら壊してしまう気がした。
放課後。
校舎の影が長く伸びる。
約束でもないのに、
足は、昨日の場所へ向かっていた。
——来なくてもいい。
——来なくて当たり前。
そう思いながら、
それでも、立ち止まる。
風が吹く。
制服の袖が揺れた。
「……来るなよ」
小さく呟く。
自分に向けた言葉だった。
もし来なかったら、
それは、それでいい。
守るために別れた、
その選択を、
否定したくなかった。
でも。
足音が、聞こえた。
ゆっくり。
ためらうような。
振り向く前に、
分かってしまった。
「……ゆきの」
名前を呼ぶ声が、震えた。
ゆきのは、少し離れた場所で立ち止まっていた。
昨日より、
ほんの少しだけ、
顔が上を向いている。
「待たせた?」
小さな声。
ゆうごは、首を振った。
「全然」
嘘だった。
でも、
それでよかった。
二人の間に、
夕焼けが落ちる。
何を言えばいいのか、
分からない。
それでも、
逃げなかった。
それだけで、
今日は十分だった。
ゆうごは、
初めて、
“待つ”ことが、
前に進むことだと知った。