スレチガイレッドスレッド

夕方の体育館は、いつもより静かだった。
ボールの弾む音が、やけに大きく響く。
ゆうごはシュートを外した。
ネットに触れず、乾いた音だけが残る。
「……集中しろよ」
自分に言った言葉は、床に落ちたまま戻ってこなかった。
ベンチに腰を下ろす。
汗を拭いても、胸の奥の重さは取れない。
——また、逃した。
踏み出して、失敗して、
それでも何もしないまま時間だけが進んでいく。
その隣に、りんたろうが座った。
タオルを首にかけ、いつもの顔。
でも、今日は少しだけ違った。
視線が、逃げなかった。
「なあ」
低い声。
ゆうごは顔を上げない。
「……なに」
「今日さ」
一拍、間があった。
「ゆきの、学校早く出てった」
ゆうごの指が止まる。
「……そう」
それ以上、言えない。
りんたろうは、しばらく黙っていた。
今年知り合ったばかりの友達。
だからこそ、ここまで来るのに時間がかかった。
でも——
今日は、線を越えると決めていた。