スレチガイレッドスレッド

「覚えてる?」
ゆりかは、ゆきのを見る。
逃げないか、確かめるように。
「……なんの話?」
「ふふ」
ゆりかは笑った。
「やっぱり、覚えてるんだ」
言葉は刃物みたいに、
ゆっくりと刺さる。
「あなた、優しいよね」
「自分が悪者になれば、全部丸く収まるって思ってる」
「でもさ」
一歩だけ、距離を詰める。
「それ、いつまで続けるつもり?」
ゆきのの唇が、かすかに震えた。
「……関係ないでしょ」
絞り出した声。
「関係あるよ」
ゆりかの声は、低くなった。
「だって、今度は私が悪者になる番かもしれないから」
沈黙。
階段の下から、誰かの声が聞こえて、すぐに消える。
誰も来ない。
誰も助けない。
「ねえ、ゆきの」
ゆりかは、最後にこう言った。
「逃げてばっかりだと、守ったつもりでも、全部失うよ」
それだけ言って、踵を返す。
振り向かない。
ゆきのは、その場に立ち尽くしていた。
胸を押さえて、
息の仕方を忘れたみたいに。
——逃げなきゃ。
そう思った瞬間、
もう遅かった。