スレチガイレッドスレッド

ゆりかは、廊下の窓に映った自分の顔を見ていた。
笑っている。
ちゃんと、いつも通りに。
——これでいい。
そう思いながら、指先だけが冷たかった。
ゆうごは、最近少し変わった。
前みたいに目が合わない。
話しかければ返事はする。でも、それ以上踏み込んでこない。
「……まだ、迷ってる」
それが分かった瞬間、胸の奥がざわついた。
ゆりかは知っている。
人の気持ちは、曖昧なままにしておくと、必ず誰かのところへ戻っていく。
——ゆきの。
名前を思い浮かべただけで、奥歯を噛みしめた。
放課後、ゆりかは偶然を装ってゆうごの前に立つ。
「ねえ、久しぶりに話さない?」
ゆうごは一瞬だけ迷ってから、うなずいた。
その一瞬を、ゆりかは見逃さなかった。
帰り道。
二人で歩く距離は、昔より少し遠い。
でも、それでいい。
「さ、最近どう?」
「普通、かな」
そっけない返事。
でも、否定じゃない。
ゆりかは、心の中で静かに息を整える。
——今は、踏み込みすぎない。
代わりに、残す。
「ねえ……もしさ、誰かを守るために嘘ついてたら、その人って悪いのかな」
ゆうごは立ち止まった。
「……どうだろ」
考えている。
それでいい。
答えはいらない。
ゆりかは笑った。
「ごめん、変なこと聞いたね」
そのまま手を振って、別れる。
振り返らない。
胸は苦しい。
でも、確信していた。
——もう一度、波は動いた。