黒幕。
白字で、
五月三日 午後八時四十七分
映像はニュースの録画から始まる。
画面下にテロップ。
「山間部廃屋付近で新たに一名の遺体発見」
アナウンサーの落ち着いた声が続く。
「本日未明、山間部の廃屋付近で二十代男性とみられる遺体が発見されました。警察は事故の可能性も視野に捜査を――」
映像は遠景。
ブルーシート。
規制線。
人影。
カメラが少しズームする。
遺体の一部が見える。
黒い服。
腕が不自然な方向に曲がっている。
頭部は映らない。
テロップが消える。
画面が暗転する。
――
次の映像。
私の部屋だ。
私は、カメラを回している。
自分の顔を映す。
目の下に影がある。
「……ニュース、見た」
声が掠れている。
「多分、武蔵だ」
私は視線を逸らす。
「トモノリのあと、夢乃、哲平……」
名前を口にするたび、部屋の空気が重くなる。
裏手拍子。
コツ。
私は振り向かない。
「三人、消えた」
机の上のSDカードを映す。
「この中に、全部入ってる」
画面に、フォルダ一覧が表示される。
meeting_0331
0417_forest
0418_call
0422_monologue
0425_field
0501_confession
0503_final
「……最後のやつ、まだ見てない」
私は、息を吸う。
「でも、多分、終わりじゃない」
その瞬間、画面が一瞬だけ歪む。
赤い線がフレームの端に走る。
逆さ鳥居。
私は続ける。
「順番、って言ってた」
声が震える。
「憑代が足りないと、家系が消える」
机の上のコップの水が揺れる。
透明だ。
だが、底に黒い点。
私はカメラを持ち、画面に近づく。
「順番は、三人で終わるはずだった」
指を折る。
「夢乃、哲平、トモノリ」
裏手拍子。
コツ、コツ。
「武蔵は、最後に残るはずだった」
私は唇を噛む。
「でも、ニュースで遺体が見つかった」
画面に、ニュースの静止画を映す。
黒い服。
「順番、崩れた?」
そのとき、PCの画面が勝手に切り替わる。
フォルダが開く。
0503_final が自動再生される。
私は触れていない。
画面が暗い。
ノイズ。
裏手拍子。
コツ、コツ。
映像が浮かび上がる。
武蔵の顔。
だが、歪んでいる。
目が黒い。
口が裂けている。
「順番は、崩れない」
声が重なる。
夢乃。
哲平。
トモノリ。
「足りない分は、補う」
画面に、逆さ鳥居が浮かぶ。
「天」
中央に黒い点。
武蔵の声。
「見る者」
私はカメラを落とす。
床が映る。
裏手拍子が速くなる。
コツコツコツ。
映像が歪む。
武蔵の顔が画面いっぱいに広がる。
「分解する」
その言葉と同時に、画面が分割される。
四分割。
夢乃の顔。
哲平の顔。
トモノリの顔。
空白。
空白に、私の顔が映る。
リアルタイム。
私は凍りつく。
画面の中の私は、瞬きをしていない。
「分解は、再構成」
声が四つ重なる。
「順番は、移る」
画面が赤く染まる。
逆さ鳥居が崩れ、線が散る。
分解。
線がバラバラになり、画面全体に広がる。
黒い点が増える。
一つ、二つ、三つ。
四つ目が、画面中央に現れる。
私は、動けない。
裏手拍子。
コツ。
背後で。
振り向く。
誰もいない。
だが、壁に赤い線が浮かぶ。
逆さ鳥居。
「天」
黒い点。
私は、息を荒くする。
「……順番は、俺か?」
声が震える。
画面の中の武蔵が笑う。
「分解しただけだ」
夢乃の声。
「ハイレタ」
哲平の声。
「順番」
トモノリの声。
「足りない」
四つの声が重なる。
「入れ」
私はカメラを拾い、PCを閉じようとする。
だが、閉じない。
画面に、赤い線が走る。
レンズの内側から。
分解された線が、再び形を作る。
逆さ鳥居。
中央に、「天」。
黒い点が、画面から飛び出すように見える。
私は目を閉じる。
裏手拍子。
コツ、コツ。
開く。
画面は通常に戻っている。
動画は停止している。
フォルダ一覧。
何も起きていない。
私は、肩で息をする。
「……気のせい」
そう呟く。
だが、スマホが震える。
非通知。
私は、震える手で画面を見る。
出ない。
止まる。
すぐに、メッセージが届く。
送信元:不明。
内容:
順番
私は、喉が乾く。
画面が、わずかに赤く染まる。
逆さ鳥居。
「天」
黒い点。
私は、理解する。
分解は、終わりではない。
順番は、崩れない。
三人が消え、武蔵が消えた。
だが、憑代は、三つで足りなかった。
家系は、外に出る。
分解し、再構成する。
私は、再生を繰り返した。
見た。
聞いた。
記録した。
順番は、移った。
裏手拍子が、すぐ後ろで鳴る。
コツ。
私は、ゆっくり振り向く。
誰もいない。
だが、壁に赤い線が完成している。
逆さ鳥居。
「天」
中央の黒い点が、わずかに脈打つ。
次のファイルは、存在しない。
だが、画面の下に、新しいフォルダが生成されている。
名前は、
next
私は、カーソルを合わせる。
コツ。
音が、すぐ耳元で鳴った。
白字で、
五月三日 午後八時四十七分
映像はニュースの録画から始まる。
画面下にテロップ。
「山間部廃屋付近で新たに一名の遺体発見」
アナウンサーの落ち着いた声が続く。
「本日未明、山間部の廃屋付近で二十代男性とみられる遺体が発見されました。警察は事故の可能性も視野に捜査を――」
映像は遠景。
ブルーシート。
規制線。
人影。
カメラが少しズームする。
遺体の一部が見える。
黒い服。
腕が不自然な方向に曲がっている。
頭部は映らない。
テロップが消える。
画面が暗転する。
――
次の映像。
私の部屋だ。
私は、カメラを回している。
自分の顔を映す。
目の下に影がある。
「……ニュース、見た」
声が掠れている。
「多分、武蔵だ」
私は視線を逸らす。
「トモノリのあと、夢乃、哲平……」
名前を口にするたび、部屋の空気が重くなる。
裏手拍子。
コツ。
私は振り向かない。
「三人、消えた」
机の上のSDカードを映す。
「この中に、全部入ってる」
画面に、フォルダ一覧が表示される。
meeting_0331
0417_forest
0418_call
0422_monologue
0425_field
0501_confession
0503_final
「……最後のやつ、まだ見てない」
私は、息を吸う。
「でも、多分、終わりじゃない」
その瞬間、画面が一瞬だけ歪む。
赤い線がフレームの端に走る。
逆さ鳥居。
私は続ける。
「順番、って言ってた」
声が震える。
「憑代が足りないと、家系が消える」
机の上のコップの水が揺れる。
透明だ。
だが、底に黒い点。
私はカメラを持ち、画面に近づく。
「順番は、三人で終わるはずだった」
指を折る。
「夢乃、哲平、トモノリ」
裏手拍子。
コツ、コツ。
「武蔵は、最後に残るはずだった」
私は唇を噛む。
「でも、ニュースで遺体が見つかった」
画面に、ニュースの静止画を映す。
黒い服。
「順番、崩れた?」
そのとき、PCの画面が勝手に切り替わる。
フォルダが開く。
0503_final が自動再生される。
私は触れていない。
画面が暗い。
ノイズ。
裏手拍子。
コツ、コツ。
映像が浮かび上がる。
武蔵の顔。
だが、歪んでいる。
目が黒い。
口が裂けている。
「順番は、崩れない」
声が重なる。
夢乃。
哲平。
トモノリ。
「足りない分は、補う」
画面に、逆さ鳥居が浮かぶ。
「天」
中央に黒い点。
武蔵の声。
「見る者」
私はカメラを落とす。
床が映る。
裏手拍子が速くなる。
コツコツコツ。
映像が歪む。
武蔵の顔が画面いっぱいに広がる。
「分解する」
その言葉と同時に、画面が分割される。
四分割。
夢乃の顔。
哲平の顔。
トモノリの顔。
空白。
空白に、私の顔が映る。
リアルタイム。
私は凍りつく。
画面の中の私は、瞬きをしていない。
「分解は、再構成」
声が四つ重なる。
「順番は、移る」
画面が赤く染まる。
逆さ鳥居が崩れ、線が散る。
分解。
線がバラバラになり、画面全体に広がる。
黒い点が増える。
一つ、二つ、三つ。
四つ目が、画面中央に現れる。
私は、動けない。
裏手拍子。
コツ。
背後で。
振り向く。
誰もいない。
だが、壁に赤い線が浮かぶ。
逆さ鳥居。
「天」
黒い点。
私は、息を荒くする。
「……順番は、俺か?」
声が震える。
画面の中の武蔵が笑う。
「分解しただけだ」
夢乃の声。
「ハイレタ」
哲平の声。
「順番」
トモノリの声。
「足りない」
四つの声が重なる。
「入れ」
私はカメラを拾い、PCを閉じようとする。
だが、閉じない。
画面に、赤い線が走る。
レンズの内側から。
分解された線が、再び形を作る。
逆さ鳥居。
中央に、「天」。
黒い点が、画面から飛び出すように見える。
私は目を閉じる。
裏手拍子。
コツ、コツ。
開く。
画面は通常に戻っている。
動画は停止している。
フォルダ一覧。
何も起きていない。
私は、肩で息をする。
「……気のせい」
そう呟く。
だが、スマホが震える。
非通知。
私は、震える手で画面を見る。
出ない。
止まる。
すぐに、メッセージが届く。
送信元:不明。
内容:
順番
私は、喉が乾く。
画面が、わずかに赤く染まる。
逆さ鳥居。
「天」
黒い点。
私は、理解する。
分解は、終わりではない。
順番は、崩れない。
三人が消え、武蔵が消えた。
だが、憑代は、三つで足りなかった。
家系は、外に出る。
分解し、再構成する。
私は、再生を繰り返した。
見た。
聞いた。
記録した。
順番は、移った。
裏手拍子が、すぐ後ろで鳴る。
コツ。
私は、ゆっくり振り向く。
誰もいない。
だが、壁に赤い線が完成している。
逆さ鳥居。
「天」
中央の黒い点が、わずかに脈打つ。
次のファイルは、存在しない。
だが、画面の下に、新しいフォルダが生成されている。
名前は、
next
私は、カーソルを合わせる。
コツ。
音が、すぐ耳元で鳴った。



