バイトで見つけた居場所

「うわ、電話きちゃった。」

スマホ片手に満員電車に乗っていると着信があった。満員すぎて出れないし、そもそも電車の中で電話に出る程非常識な人間でもない。

一旦着信をスルーし、自分が行こうとしていた駅で降り改札を抜けずベンチに腰掛けて電話をかけ直した。ワンコールで出た。

「あ、お世話になっております。先程お電話いただいた小林です。直ぐに出れなくて申し訳ございません。」

「いえ全然大丈夫ですよ。折り返しありがとうございます。今お時間大丈夫でしょうか。」

電話の相手はこの間の無愛想な不動産屋の男性からだった。物件を見に行ってから二週間が経とうとしていた。

「あと三十分ぐらいで次の予定があるのですが...」

「かしこまりました。なら単刀直入に言いますね。保証会社の件、連帯保証人がいなくても大丈夫みたいなのでご連絡させていただきました。」

「本当ですか!?」

どうせこんな小娘が言った面倒臭い事なんて忘れているのだろうと捻くれていたが、まさかちゃんとやってくれていたなんて。最高の不動産屋かもしれない。

「はい。なのでこのまま審査に移りますか?それとも一旦誰かに相談してからに...」

「このまま審査に移ってください。」

ここまできて、今更一体誰に相談すると言うのだ。

「かしこまりました。このまま審査の手続きを始めます。また結果が出ましたらご連絡させていただきます。」

「はい、よろしくお願いします。失礼します。」

電話を切り、目的地に行く為に改札を抜けた。

目的地に行くまでの間、審査が通った後の事を考えていた。クレジットカードも届いているし料金は問題なく払える。問題は母親をどう説得するかだ。

まず第一に母親の機嫌がいい時ではないといけない。そうなると私の給料日前は話し合いは避けた方がいい。

いかに母親の機嫌を読み取れるかが私の運命の分岐点になる。得意っちゃ得意だが、もし間違えたら今回は命がなくなるかもしれない。

正直かなり怖い。話す時、誰かに一緒に居てほしい。

けれど残念ながら私には自分の家庭環境を話せる友達も居なければ、彼氏も居ない。なんて悲しい人生なのだろう。

誰にも頼れない。自分で頑張るしかない。大丈夫、私なら出来る。

そう自分に言い聞かせながら歩いていると、目的地に着いた。

「この会社って会議室使うの好きだよなぁ...」

指定された場所はこの間とは違う会議室。場所も私の住んでいる地域より遠い。交通費が出るから許すが、これがもし出ていなかったら許せないぐらい遠い。

私は今、キャッチバイトの二次面接に来ていた。

上野さんから指定した場所に着いたら上の者にLINEするようにと、上の人のアカウントと送る文面まで用意してくれた。至れり尽くせりすぎる。

【初めまして、本日十二時からお世話になります、小林瑠奈です。指定した場所に到着しましたのでご連絡させていただきました。】

コピペしてくれた文章を上の人に送り、じっと指定された場所で待つ。人気のない所だしなにより外で待つというのがこの季節には寒すぎる。

厚着するのが得意ではないからコートの下は薄いブラウス一枚しか着ていない。下も黒のズボンとレストランに出勤する時の服装とほぼ変わらない。

服装はなんでもいいと言われていたが、いくらほぼ採用確定だとしても一応面接だ。フリフリのスカートでは行けないだろう。

私の私服はフリフリのスカートか膝丈ぐらいのスカートしか持っていない。だから前のバイト先を辞めた時にパクった黒ズボンで来たのだ。

それよりまだ来ないのかな。もうすぐ指定された時間になるんだけど。もしかして私、来る場所間違えたとか...?ポンコツな私ならやりかねない。

「こんにちは、小林さんであってるかな?」

もう一度上野さんとのLINEを見返そうとスマホをいじっていると声を掛けられた。

「え、あ、はい。」

スマホから顔を上げるとそこにはがたいのいい男性が立っていた。でも怖さはない。にこにこしている。

左手の薬指に指輪をはめているから既婚者なのだろう。

「小林さん、初めまして。本日面接を担当します若林健太(わかばやしけんた)です。」

この人が上野さんの上の人か。優しそうな人だ。上野さんが優しい理由が上の人が怖いからではなくて良かった。

「初めまして!小林瑠奈です。本日はよろしくお願いします。」

「十分ぐらい待たせちゃったよね。寒いのにごめんね。」

「いえ大丈夫です!私が早く来すぎただけなので!」

正直に答えると若林さんは小さく笑った。とにかく私のポンコツで場所を間違えた訳ではなくて良かった。

「この会議室結構入り組んでるし周りにも別の人が話し合いしたりしてるんだ。ごめんね、ちゃんとした会議室じゃなくて。いつも使ってるのが借りれなかったんだ。」

中に入り若林さんの後ろをついて歩いていると、唐突に謝られた。私からしたら別に場所などどうでもいいから謝られる事ではない。

「いえいえ全然大丈夫です!」

「優しいなぁ。ありがとう。」

細い目をもっと細くして笑いかけるのは反則だ。私の性癖にささる。顔はタイプではないけれど。

「ここの一角で面接するね。って言っても上野からかなり推薦されてるからもう採用だし。ただ談笑するイメージでいこ。」

案内された所は居酒屋とかでありそうな、意味があるのかわからない短いカーテンでこちらを隠したソファー席だった。確かに会議室にしては適当すぎかもしれない。これで会議室と呼んでいいのか謎だし。

「私って採用確定なんですか。」

サラッと爆弾発言されてスルーする所だった。確かに上野さんから推薦するしほぼ採用確定だとは言われていたけれども。上の人に言われるとドッキリなのではないかと疑ってしまう。

「うん、採用。だって上野があんなに推薦するの珍しいし。」

「上野さん...」

なんて言ったのだろう。これで期待されていざ仕事して、全然出来なくて幻滅なんてされたくない。

「でも一応形だけ面接しようかな。上野から聞いてると思うけど、業務内容は土、日に携帯会社のイベントスタッフをやってもらいたいんだ。」

「結構シフトは自由で、出ない月とかもあっていいよ。出れますって言って急遽出れないはかなり困るからやめて欲しいかな。病気とかだったら全然仕方ないしむしろ言ってほしいんだけど。」

「どうかな、やってくれるかな?」

細い目をもっと細め、にこにこしながら問いかけてきた。

採用と言いつつ、私の意志を確認しようとしている。この人、にこにこしているだけでかなり頭がキレる人だ。

怖いけど、この仕事をやれば毎月それなりのお金が手に入る。だから怖いからやらないという手はないし、ここまで来て断るなんて事も私はしない。

「やります。むしろやらせてください。」

若林さんの目をしっかり見て言いきった。

私は人と目を合わせるのが得意ではない。人の目を見ると責められている気がして怖いのだ。だから相当心を開いた人としか目を合わせられない。

でも今はそんな事言っている場合ではない。こんな大事な場面で目を合わせるという簡単な事も出来なかったら、この仕事なんて務まらない。

もしかしたら若林さんもそれをわかってにこにこしながら目を合わせてきてるのかも。

「やらせてくださいって凄い意気込みだね。この仕事をしなきゃいけないなにかがあるの?」

「一人暮らしをしようとしてて。その為に安定した給与が欲しいんです。だから頑張ります。」

「その歳で一人暮らししようって思うの凄いなぁ。私、小林さんの歳の時飲み歩いてたからさ。」

「未成年なんでそもそも飲まないです...」

「え、なに一回も飲んだ事ないの?」

「ないです。わざわざ未成年で飲む意味がわからないですし。」

「偉すぎるでしょ。真面目なんだね。」

「普通だと思いますけど...」

こういう場面になると必ずと言っていいほど真面目と言われるが、してはいけないという事をわざわざする意味がわからない。その原理でいけば殺人も犯していい事になる。

「小林さん、見るからに真面目そうだもんね。今日だって服装指定なかったのにちゃんとしてるし。」

「私服がかなり短いスカートとかワンピースしか持ってないのでこうなりました。」

「まあ別にそれでも良かったけど。うちの会社月に一回か一ヶ月半に一回、バイトに行く為に使った交通費を申請する日を設けてるんだけどその時は全然私服でいいからね。」

「わかりました。」

交通費申請、オンラインではダメなのかと思ったが、こうでもしないと私は新しく買った服を着る機会がないからいいかと思いなおした。

「改めてこれからよろしくね、小林さん。」

手を差し伸べられて、握ったら逃げられないなと思ってしまった。

「よろしくお願いします。」

でも私はその手を握った。断れないし断る理由もない。それに逃げられないと思ったがよくよく考えてみたら一体なにから逃げられないと言うのだ。自意識過剰にも程がある。

「それじゃあ面接は以上かな。なにか質問とかある?」

「大丈夫です!」

「なら入口まで送るね。」

「ありがとうございます。」

私は超がつくほどの方向音痴だ。だから入口まで送ってくれるのはありがたい。ここに来るまでにもスマホで地図アプリを使ったのに迷ったぐらいだ。

初めて行く土地は自分が思っているより一時間ぐらい家を早く出なければいけない。不便すぎる。

「ねぇ失礼だったら申し訳ないんだけど、身長いくつ?」

今日の夕飯を考えながら歩いていると若林さんに聞かれた。この質問にも慣れているから失礼とは感じない。

「百五十なかったと思います。」

「へぇー、小さいね。中学生ぐらいに間違われない?」

「たまに。」

「間違われるんだ。」

楽しそうに笑っているがなにが面白いのかよくわからなくて苦笑いを返しといた。

「それじゃあ、帰り気を付けて。業務の連絡はLINEに送るね。」

「ありがとうございます、かしこまりました!よろしくお願いします。」

手を振ってくれる若林さんを背に、どこにも寄らず帰路についた。



「瑠奈ー、携帯鳴ってるよ。」

若林さんと会った五日後の夕方。夕飯を作っていると母親がそう叫んだ。着信先は見なくてもわかる。

「えー、今手離せないから後で折り返す!放置しといてー」

「おっけー」

私はスマホを肌身離さず持つタイプではない。料理を作る時は熱さでスマホが壊れるかもと思い、その時思いついた場所に置いている。

そして母親も人のスマホを見る人ではない。こういう所はちゃんとしているのだ。

多分着信先は不動産屋だろう。審査、どうなったのかな。良かったとしたら母親に話す日を決めなければいけないし、悪かったとしたらまた一から物件を探さなければいけない。

どっちの結果に転んでも考える事はさほど変わらない。でもそれを乗り越えれば楽しい事が待っているかもしれない。

なんてそんな漫画みたいな事、現実で起こる訳ないじゃない。浮かれてはダメよ、私。

「あら、夕飯できたのね。よそうのはやるから電話掛けて来ちゃいな。」

一人で考えてつっこんでいると、母親が優しくそう言った。なんでだろうと思ったが今は理由を考えるより不動産屋に連絡をするのが先だ。

優しくしてくれてるなら、それを利用しないと。

「ならお願いしようかな。ありがとう!」

愛想良く笑ってスマホをリビングのテーブルから取り、自分の部屋に入った。私の部屋は弟の部屋と隣なのだが、今日は部活で遅くなると言っていたから電話の内容を聞かれる事はないだろう。

スマホを見て一応不在着信の番号を確認すると、やはり不動産屋からだった。深呼吸をしてからかけ直した。ワンコールで出た。

「お世話になっております。先程お電話いただきました、小林です。」

「お世話になっております。今お時間大丈夫でしょうか。」

「はい、大丈夫です。」

「物件の審査結果が出たのでご連絡させていただきました。結果で言いますと、審査が通りました。」

「ほんとですか!!」

思ったより大きい声が出てしまって慌てて口を押さえた。弟が隣に居なくても母親が下にいるから声量に気を付けないと。

「はい。なので料金の支払いをお願いします。現金かクレジットカードとなりますがどちらにしますか?」

「クレジットカードでお願いします。」

「かしこまりました。後程この電話番号にショートメッセージを送らせていただきます。そこから手続きよろしくお願いします。」

「かしこまりました。」

「電気やガス、水道の開通はご自身でお願いしております。それかもしかしたらこの家を管理している会社から電話がきて、無料で開通手続きの代行をしてくれるかもしれないです。」

「この家ってそちらで管理してないんですか?」

「うちは管理してる会社から依頼されてネットに掲載しているだけなんです。借りるまでのお手伝いって言った方がわかりやすいですかね。」

ネットに掲載されている物件は全て不動産屋が管理していると思っていた。一つ賢くなった。

「そうだったんですね。なら自分で開通の手続きよりその会社から電話くるの待った方がいいですか?」

「小林様が先に開通手続きをして、管理している会社から電話が来たら開通しましたと言っていただいても大丈夫ですよ。」

「わかりました。」

無料で開通手続きをしてくれるならやってもらおう。私はそこで頭を使う程暇ではないし。

「それではこの電話を切ってすぐショートメッセージを送ります。失礼します。」

「はい、ありがとうございます。失礼します。」

切れた電話を見ながら、じわじわ審査に通ったのだと実感してきた。

「よかったぁぁ...」

電話に出る前は審査結果は良くても悪くてもさほど変わらないと思っていたが、やはり良かった方が安心感が大きい。

家が決まったからには自分の部屋の荷物も片付けていかないと。引越し業者に頼みたいと思っているが、それなりのお金がかかる。貯金ゼロの人間だからそこで数万飛ぶのは痛い。でもいくら少ないとはいえ、この部屋の荷物を自分で持って運ぶのは無理があると思う。

「とりあえず今はどう話を切り出すか考えないと...」

荷物よりも先に、母親になんて言うかを考えないと。絶対条件は母親の調子がいい日だ。それでいて家族が揃っている日の方がいいだろう。でもそんな日あるのか...。

「...今日じゃね?」

今日だったら母親の調子もいいし、二十時頃には父親と弟も帰って来る。家族全員か揃う日なんて一ヶ月に一回あるかないかぐらいだから今日話すしかない。

「うわー、緊張するなぁ。」

今日審査が通ってもう話さなければいけないなんて。もう少し審査に通った余韻に浸らせてほしかった。もしかしたら話してる最中に刺されてしまうかもしれないのに。

「大丈夫、私なら上手くできる。」

そう自分に言い聞かせてリビングに戻ろうとしたが、ふと思い出した事があった。

「若林さんに連絡しないと。」

家の審査が通ったら、派遣バイトの方で沢山シフトを入れてもらおうと考えていたのだ。そっちの方がレストランで働くよりお金が貰える。同じ労力を使うならお金が高い方がいい。

【お疲れ様です、小林です。シフトの件なのですが、来月入れそうな所全部入れてほしいです。】

「これでよし。」

私にはキャッチ歴など到底ない。だから正直、沢山シフトに入れてもらうのは厳しいだろう。それでも言わないより言っといた方が、私みたいなど素人でもいいよという現場があった時に入れてもらえやすい気がする。

LINEを開いた時に不動産屋からショートメッセージもきていたから、指示通り文字を打ってお金を払った。分割払いにしたから毎月頑張って払っていこう。その為には沢山働かないと。


「あのね、私みんなに報告があって。」

家の審査が通ったと知ってから二時間後の二十時頃。私は食卓を囲んでいる家族にそう切り出した。

「なーに、彼氏でも出来たの?」

母親がからかうように聞いてきたが残念ながら彼氏など、出会いがない私に出来るわけない。でもからかってきたって事は調子は良さそうだ。

「私、一人暮らしをしようと思ってるの。もう家も借りた。」

スラっと、なんでもない事を話すみたいに。ご飯を食べながら宣言した。

心臓の音がうるさくてちゃんと言葉を発せているのかわからない。それにみんなの反応...母親の反応が怖くて見れない。食べ物も美味しいはずなのに何も味がしない。

「...いつ出てくの」

しばらくの沈黙の後、母親が静かに聞いてきた。この聞き方は怒っているなとちらっと母親の顔を見ると、声とは裏腹に表情は柔らかかった。

「来月かな。」

「そう。瑠奈ももう一人暮らしする歳になったのね。寂しくなるなぁ。」

そういう母親の目にはうっすら涙が浮かんでいた。その姿を見るとこちらまで涙が出てきそうになる。情が湧いて引っ越すのが辛くなってしまうからやめてほしい。

そういえば、父親と弟はなんの反応もしないけれど何をしているのだろう。横に座っているであろう弟を見ると、無言でご飯を食べていた。父親も同じだった。

別になにか言ってほしかった訳ではないが、一応父親とは十八年間、弟とは十六年間一緒に過ごしたのだ。それなのになにも言われないというのは悲しいし腹が立つ。今まで沢山色んな事やってきたのにって。

見返りを求めてなにかやっていた訳では決してない。でも私の今の気持ちを誰かに話したら見返りを求めてると思われてしまうのかな。

「そんな悲しまなくて大丈夫だよ!遊びに来るし、そんな遠くないから!」

色んな気持ちが混ざって、笑顔でなんていられる心境になかった。けれど母親をこれ以上悲しませない為に無理矢理笑顔を作った。

「どこに家借りたの?」

幸い、母親はそんな私の心境に気付かなかった。良かったと安堵すると共に、昔のまだ正常な時の母親だったら気付いただろうなと寂しくなった。

「ここの最寄りから三駅先だからそんなに遠くないよ。車で十五分ぐらいかな。」

「それなら私も行けそうだし、瑠奈もうちに遊びに来れるわね。レストランのバイト辞めないでしょ?」

「辞めないよ!だからレストラン来ても会えるから大丈夫だよ〜」

これでもかってぐらいの笑顔を作って言うと、母親は目を細めながら私の頭を優しく撫でた。

「ほんとに大きくなったねぇ。いつか巣立つ時が来るとは思ってたけど、こんな早いとは思わなかった。」

怒られるとばかり想定していたから、こんな優しい母親は想定外でどう反応したらいいかわからない。

でもこんな優しく撫でてもらえるのは久しぶりだし、今だけは私だけを見てくれてるからそれに甘えよう。

「ほら私、フリーターだから。早く自立しなきゃなって。」

一人暮らしをしたかった第一の理由ではないが、これも思っていた事だ。まるっきりの嘘ではないからいいだろう。

「そんな事思わなくてもいいのに。私、自分の子供は宝物だと思ってるからずっとここに居ていいのよ。」

宝物って言う割には私からお金受け取るくせに。

「それだと私、甘えちゃうからさ。子供部屋おばさんになっちゃうかもよ?」

「そうなったとしても、親は子供にそばに居てほしいものなのよ。」

母親も今はこう言っているけれど、調子が悪い日は今と真逆な事を言う。どっちが本当の気持ちなのかわからない。だから私は悪い方を信じる。今の気持ちは本当だったらいいのになぁと思いながら聞き流す。

「そっか...」

「親の心子知らずって事よ。瑠奈も子供が出来たらわかるようになるから。」

「はは...」

こう言っている母親には申し訳ないが、私は子供が嫌いだ。

話は通じないし、同じ事を何回も聞いてくる。何より私が子供を生んだら私みたいな子供が生まれてくるだろう。それが無理だ。自分自身、こんな面倒臭い性格で嫌気がさしてるのに同じ性格の子供なんてまともに育てられる訳ない。虐待したくないのにしてしまう気がする。だから私は子供を生まないし、もし良い人が見つかってもそういう行為は絶対しない。

「来月引っ越すのよね?ならその前に瑠奈と行きたかった所行きたいな。」

「どこ行きたいの?」

母親は私の頭から手を離すと、スマホである画像を見せてきた。

「このスイーツバイキングに行きたくて!ここって季節毎にスイーツの味が変わって、今イチゴのスイーツなの!」

「私食べれないなぁ。」

「季節のスイーツ以外にもチョコケーキとかチーズケーキ、プリンもあるから大丈夫よ!行こうよ!」

「それなら大丈夫そう。いつ行く?」

「私はいつでも空いてるから瑠奈のシフト次第かな。」

「明後日なら休みだよ。その日行く?」

「そうしよう!楽しみだなぁ。」

母親はにこにこしながら食べ終わった食器を片付け始めた。男性二人はとっくにいなくなっていた。