『名前と声を伏せたまま、私たちは繋がっている』

 ログイン直後にロビー画面の隅に表示された通知を見て、杏瑞は指を止めた。

(これって……なに?)

(この赤いドット……)

 普段、あまり見たことがない場所に『未読』の表示が出ていた。

 気にはなったが、『これが最後』と思っていたので、試合に集中することにした。

(アプリコット、思いっきり行くよ!)

(どのような結末になっても、後悔しないように……)


 最後のプレイが始まった。

 そこは、いつもの『始まりの島』

 同じチームとなるメンバーを確認した。

(チームキラーがいないといいけど……)

 1番と2番は外国人。瞬間に「あっ……!」と声が出た。

(またかな、イヤだな……)

 二人とも似たようなキャラクター名なので、きっとフレンド同士なのだろう。
 3番は『ちょろぎ』と書いてあり、日本の国旗だったので安心した。そして4番が『アプリコット』となっていた。

(日本人がいてよかった……)

 すると、〈テキストチャット〉で

ちょろぎ:
「よろしくお願いします」

 と、メッセージが表示された。

 挨拶は、キャラクターボイスを使用した〈クイックチャット〉が簡単で一般的だが、わざわざ打ち込んでくれたらしい。

 杏瑞もそれに従うように

アプリコット:
「お願いします」

 と、返した。

(私のために、テキストで書いてくれたのかな?外国人には読めないと思うし)

 色々考えているうちにカウントが『0』になり、メンバーのキャラクターが表示されていた。
 ちょろぎを見ると、コートを着た男性のキャラクターだった。

(全身赤って、目立ちそう)それが、印象的だった。

 そして飛行機に搭乗。マップを開き、降下場所の確認をした。

(最後だし、なるべく航路から離れた場所に降りて、安全に行動しよう)

 着地場所を選んでいると、ちょろぎから
『一緒に降りましょう』とメッセージが届いた。

(えっ、一緒に降りるの?激戦区に連れて行かれたら、すぐ終わっちゃう……)

 一瞬躊躇したが、せっかく誘ってくれたのでメッセージ欄の『OK』ボタンを押し、同行することにした。

 1番と2番は、すでにピンを刺して『激戦区』に向かう様子だった。

(よかった……今回は違ったんだ)

 安堵して、自分たちが降りる場所を確認する。

(あれ?ちょろぎさん、どこで降りるのかな?ピンも刺してないけど……)

 不安でいっぱいだったが、信頼するしかない。

 しかし、いつまで経ってもピンは刺さらないまま。
 飛行機は、最終地点の強制的に降ろされる場所まで移動し、二人は自動落下した。

(えー、なんなの、この人?どういうつもり?)

 杏瑞は『だまされた』と思った。
 その直後、〈ピン〉が立ったことを示すマークが表示される。

(今になってピンを刺したの? えっ?しかもそこ、届かない場所だし)

 困惑する杏瑞だったが、すでに、ピンに向かって二人で降下している。

(これは無理。キャンセルして、小さい街で物資を探そう)

 キャンセルボタンを押そうとしたとき、ちょろぎからの〈クイック〉ボイスが流れる。
『遅くなってすまない』と、低い声の男性ボイスだった。

『だまされた』わけではないことに安堵はしたが、ピンの位置は届かない場所のまま。このままついて行って良いのか悩んでいたら、パラシュートが開きだした。

(こんなに早く?……)

 先ほどから不安と安心が交互に襲ってきて気が気でない状態が続く。

 二人は、ゆっくりと降下を続ける。
 画面を見ていると、ブランコを漕ぐように前後しながらピンに向かい進んでいた。

 杏瑞は飛行距離を見た。1800mと通常より長い。しかも、いまだ空中にいる。

(早くパラシュートを開いた理由って、このこと?これならピンまで届きそう……)

ちょろぎから『待たせたな』と、〈クイック〉が流れる。

 杏瑞も〈クイック〉で『ありがとうございます』と、かわいい女性の声で返答した。

 二人は、ピンの刺した場所にしっかり降りていて、飛行距離は2000mを超えていた。

(こんな技があるんだ。ちょろぎさんって、すごいかも)

 感心しながら左右に分かれ、物資を拾い始めた。

(これだけ航路から外れると、ゆっくり探すことができる)

 杏瑞はちょろぎに、心の中で感謝した。

 小さい街ではあったが、最低限の物資は拾えた。
 しかし、ヘルメット・ベストが〈Lv.1〉だったので不安ではあった。このあとに違う場所で『見つけられれば良し』と思いながら、杏瑞の最大の武器である〈スナイパーライフル〉を探していると、ちょろぎからの〈クイック〉が聞こえてきた。 

『ここにLv.3のヘルメットがあるぞ』

『ここに8倍スコープだ』

(レア装備が余ってるんだ。助かるな)

 杏瑞は『ありがとう』と、感謝の〈クイック〉を返し、場所を示すピンに向かって走り出した。

 目的地に着くと、ちょろぎが横に立っていて、拾うのを見ている。
 自動取得システムでヘルメットを交換。

 すると、アプリコットが外した〈Lv.1〉のヘルメットを、ちょろぎが拾った。

(私に譲るために呼んでくれたの?)

 今までプレイしてきて、初めての経験だった。きっと、スコープも余っていた訳ではないだろう。

(初めて会ったプレイヤーなのに、なんで優しくしてくれるんだろう)戸惑いと感謝で困惑する。

 少しでも感謝を伝えたいと思い、〈テキスト〉でお礼をした。

アプリコット:
 「ありがとうございます。これ、余っていた訳ではないですよね。申し訳ありません」

 すると、ちょろぎからの返答があった。

ちょろぎ:
 「大丈夫です。どこかで拾えますから」

 「他に欲しい物はありますか?あれば、お知らせします」

 杏瑞は申し訳ないと思いながらも伝える。

アプリコット:
 「〈スナイパーライフル〉があれば欲しいです。種類は何でも。ちょろぎさんは何かありますか?」

ちょろぎ:
 「わかりました。見つけたら知らせます。メインは〈アサルトライフル〉なので、どこでも拾えるから大丈夫です 笑 」

 「もう少し探したら、移動しましょう。安地(安全地帯)への収束時間が迫ってます」

(もう、そんな時間なんだ。次の安地まで距離がある……早めに移動しないとキツいか……)
 
 再度ちょろぎにお礼を言い、建物を物色していた数分後、ちょろぎからの〈クイック〉が聞こえた。

『安全地帯へ向かおう』
『車を探してくる。待っててくれ』

 その声に対して、杏瑞も『了解です』と返答し、ちょろぎの元へ駆け出す。

 ちょろぎの後を追いかけるかたちで、安全地帯方向に向かいながら車を探す。

『あそこにあるぞ、急げ!』と、ちょろぎからの〈クイック〉の声。

 ちょろぎが乗り込んだ瞬間、見慣れた古い車が赤いスポーツカーに変化した。

(あれが車のスキンなんだ。かっこいいな……)


 感心していると、車はUターンしてアプリコットの元へ。二人を乗せた車は安全地帯へ向かう。

 杏瑞はちょろぎに〈テキスト〉で話しかける。

アプリコット:
 「車かっこいいですね。私、持ってないから新鮮です」

 すると、ちょろぎは

ちょろぎ:
 「この車が好きで唯一、課金しました 笑 」
 「でも、運転は下手なんですよ 苦笑 」

 と返答してきた。

 運転中に悪いとは思いつつ、続けて

アプリコット:
 「私は課金した事がないので……うらやましいです」

ちょろぎ:
 「無理に課金しなくてもいいと思います。実力が上がる訳でもないし 笑 」

アプリコット:
 「確かに 笑 」

(気さくな人でよかった)

 久しぶりの楽しいプレイに笑顔がこぼれた。

 思い出したように画面を見ると、1番・2番の二人はいつの間にか倒されたらしく回線落ちしていた。

アプリコット:
 「二人、ログアウトしましたね」

ちょろぎ:
 「デュオスク(2vs4)になりましたね 笑 」

 厳しい状況にはなったが、杏瑞は楽しくてたまらなかった。テキストとはいえ、ここまで会話したのも初めてだった。

(会話って、こんなに楽しいんだ……それとも、相手がちょろぎさんだからかな?)

 過去の嫌な思いを忘れ、プレイを満喫していた。

 車が安全地帯に向かって走行していると、前方上空から物資が落下してくるのが見えた。定期的に落ちてくる『エアドロップ』だ。

ちょろぎ:
 「取りに行こう」

アプリコット:
 「えー!行くの?」

 レアアイテムが入っているクレートだが、それだけに他のプレイヤーも狙っていて、狙撃されたり、鉢合わせになることが多い。

 車は落下地点と思われる場所に向かって走り出す。

 アプリコットは助手席でスモークを取り出し、準備をする。

 着地寸前のクレートが視界に入る。アプリコットは助手席から身を乗り出し、クレートめがけてスモークを投げた。

 車がクレートにぶつかって停止。アプリコットは車から飛び降り、物資を取りはじめた。

(やった、AWM〈スナイパーライフル〉だ! これで戦える)

 スモークで視界が悪い中、装備を整えていたが、『あっ!』と気がつく。

(ちょろぎさんが、車から降りてこない……なんで?)

 数秒後、ちょろぎは追加のスモークを投げた。視界がさらに悪くなった中、ようやく車から降り、拾い始めた。

(また、私を優先させてくれたんだ……)

 真っ先に車から降りて武器を取った自分が、恥ずかしくなった。

 テキストを使って会話する状況ではなかったため、〈クイック〉で『ごめんなさい』と謝ったが、 思ったことが伝わったらしく、ちょろぎからは『問題ない』と返答があった。

(私ばっかり守られてる……せめて足を引っ張らないようにしないと)

 アプリコットは、助手席に乗ってスタンバイ。
 ちょろぎも早い動作で装備を整え、車を発進。
 直後、左右両方から攻撃を受けた。
 ちょろぎの操る車は、正面にある小高い山に向かっている。
 アプリコットも敵の位置を確認しながら、いつでも戦える状況で待機した。

 そして車は左右からの敵の死角になる場所で停止。二人は同時に車から飛び降り、伏せた。

 このマップでは『最強のスナイパーライフル』と呼ばれる〈AWM〉。これをアプリコットに渡すために、無理してエアドロップを取りに行ったことは想像できた。

(ちょろぎさんの期待に答えないと……)

 アプリコットは〈AWM〉に持ち替え、攻撃を受けた一方の敵をスコープ越しに確認した。

 8倍スコープのおかげで敵をすぐ発見することができた。杏瑞はすかさずピンを刺す。

『前方に敵がいます』

 ちょろぎもピン方向を確認するが、3倍だったため、判らない様子だった。

(ここで狙撃することもできるけど、もし外したら位置がバレちゃう……)

 杏瑞は迷っていた。このライフルなら一発でダウンさせられる。しかし外した場合、何度も撃つことになり、相手はもちろん、もう一方の敵にもばれてしまう可能性が高い。

 杏瑞が迷っていることを察したちょろぎが背中を押す。

ちょろぎ:
 「こちらは俺が警戒するから」

 杏瑞はびっくりしたが『察してくれたことに感謝』し、

アプリコット:
 「お願いします」

 一言コメントしたのち、スコープを覗き直す。

(敵は二人。とどめを刺さなくても、ダウンさせればいける……)

 動きをスコープで追う。ちょこちょこ動いているので止まる瞬間を待っていた。

(まだ、まだだ……)

 焦る気持ちを抑え、チャンスを待つ。
 
 2階建ての家、屋根上に二人並んで頭を出したり、引っ込めたりしているので狙いづらい。

(まだ……もう少し、頭をだして……)
  
 杏瑞が願っていると突然、近距離から銃声が聞こえた。

(ちょろぎさんなの!? 敵が攻めてきた?)

 監視を中断し、ちょろぎのいる方向を見ると三人と接敵していた。

(援護にいかないと!)

 立ち上がって駆け出そうとした瞬間、自問自答した。

(今から行っても追いつくのが精一杯。間に合ったとしても、近距離戦で撃ち負ける可能性が高い……)

〈AWM〉のスコープを4倍に切り替えた。

(ここから援護した方が確実にいける)

 スコープを覗き、左から右に向かって走っている相手を捉え、銃弾が当たる位置を考慮し、〈リード撃ち〉をする。

 見事にヒット。すかさずリロードし、二人目を狙う。
 今の狙撃を警戒したのか、敵は付近にある木に隠れた。

(隠れられた……)
  
 ダウンした仲間を助けようと、スモークを投げるモーションをした時、身体が少し見えた。

(今っ!)

 頭部にヒット、二人目のダウン。
 一方のちょろぎは残る一人と撃ち合っていた。
 スコープを覗き、戦いを見てみる。
  
 敵は手練れで、岩に隠れながらちょろぎを『牽制』し、数発撃ってから隠れるを繰り返す。

 ちょろぎもブロック塀を盾に相手の様子を伺っている。

 杏瑞も加勢しようと試みるが、あまりに動くため、狙いが定まらない。
 
(これじゃ、狙いにくい……)

 スコープをちょろぎに向ける。塀を背にしていて動く様子がなく、銃を手にしていなかった。

(大丈夫かな、ちょろぎさん)

 なおも攻撃してくる敵だったが、全弾撃ち尽くしリロードを始めるモーションに移った時だった。

 ちょろぎが投擲しようと、構え始めた。時間を計ったように立ち上がり、敵に何かを投げた。

 敵のリロードが終わり、ちょろぎに向かって撃とうとした瞬間……敵は爆発に巻き込まれた。
〈手榴弾〉が絶妙なタイミングでヒットした。

 相手チームの三人目が倒されたため、ダウンした二人は『ルートボックス』に姿を変えた。

「すっ、すごく……う…まい」

 思わず、声が出た。

ちょろぎがこちらに向かって走ってきた。

ちょろぎ:
 「ナイス!遠距離射撃、うまいですね」

アプリコット:
 「ちょろぎさんこそ、投擲が凄かったです。感心しちゃいました」

ちょろぎ:
 「偶然です 笑 」

 今の音を聞いていたのか、もう一方の『屋根上にいた』敵が車に乗ってこちらに向かってきた。

『警戒しよう』

 ちょろぎからの〈クイック〉が聞こえてきた。

『了解です』杏瑞も返す。

 二人で近くにあるコンテナへ移動し、遮蔽物として警戒する。

 アプリコットは、近距離用の武器に持ち替え、ちょろぎは銃をしまい、手に何かを持っている。

 敵の車は止まる様子もなく、コンテナに向かって突っ込んで来た。

 降車寸前に、ちょろぎは火炎瓶を投げ込む。
 アプリコットも火炎瓶の炎に注意しながら車に向かって、9ミリ弾をマガジンが尽きるまで撃ち込んだ。

 二人の敵は何もできず『ルートボックス』となり、事なきを得た。

(緊張したー。ちょろぎさん、やっぱり凄い)

 初めて組んだにも関わらず状況を察して行動するアプリコットを見て、ちょろぎも感心していた。

アプリコット:
 「ナイスタイミングでした」

ちょろぎ:
 「ナイスカバーです」

 二人で褒めあう形になり、杏瑞は笑ってしまった。

 その後も安全地帯が狭くなるにつれ、接敵することが多々あったが、アプリコットの〈スナイパーライフル〉と、ちょろぎの〈アサルトライフル〉で、お互いの得意武器で敵を倒していき、気がつくと『生存者(6)』となっていた。

 安全地帯ラインギリギリで草むらに隠れ、状況を見守る。残っている敵四人の位置が分からず、動くと危険だった。

ちょろぎ:
 「残りは1〜2パー(パーティー)かな」

アプリコット:
 「そうみたいですね」

ちょろぎ:
 「もう少し様子をみましょう」

アプリコット:
 「私、接近戦が下手なんで期待しないで下さい」

ちょろぎ:
 「俺もですよ 笑 気楽にやりましょう」

 プレッシャーを与えない配慮に、杏瑞は緊張がほぐれた。そして息を潜め、周囲を警戒する。

ちょろぎ:
 「ここは遮蔽物がないから、240の岩まで移動しよう」

 杏瑞は画面上にあるコンパスを240に合わせ、岩を確認した。大、小と二つ並んでいる。

 ちょろぎを先頭に、『ほふく前進』で移動。敵がどこに何パーティーいるか分からないため、前進しながらも警戒。
 すると、突然銃声が聞こえた。

 『ばれた』と一瞬思ったが、敵同士が撃ち合っている。チャンスとばかりに、走って岩まで移動した。

ちょろぎ:
 「目の前の小屋だね」

アプリコット:
 「確認します」

 スコープを覗くと、小屋に二人。ちょこちょこ動いている。

 画面を確認すると『生存者(4)』敵は目の前の二人だけということになる。

 敵にバレていなかったが、状況が変わってきた。

『安地に気をつけろ』 

 ちょろぎからの〈クイック〉が聞こえた。

 杏瑞は『はっ』とし、画面にあるタイムカウンターを見た。次の収縮時間まであと30秒。
 慌てて、マップを広げる。自分たちのいる場所がエリア外になってしまう。
 敵は安全地帯内のまま。収縮が始まると、こちらは遮蔽物のない不利な状況になる。

(今のうちに、なんとかしないと)

 スコープを覗きチャンスを待つ。収縮の残り時間が20秒を切ったとき、敵の一人が操作ミスなのか、頭が半分ほど見えた。

(今だ!)AWMを撃つ。一人ダウン。

 しかし、ちょろぎが岩陰から様子を伺った瞬間、敵の攻撃を受けダウンした。

 杏瑞は急いで、ちょろぎに向かってスモークを投げた。救護しようと近寄った瞬間、敵の走ってくる足音が聞こえた。

(えっ、味方の回復をしないで突っ込んでくるの?)

  思いもしない行動。そして接近戦は不得意という思いが交錯し、パニックを起こしそうになったが、初めて観た配信者の行動を思い出した。

  敵に向かってスモークを投げ、続けて火炎瓶。足止めをしてちょろぎを救護。

 しかし、足止め効果は上手くいかず、敵は迫ってきた。

 近距離の武器に持ち替え、備える。
ちょろぎを救護しても体力は最低限。回復するまで持ちこたえなければ……

 アプリコットはちょろぎの身体に触れ、回復させる。

 40%……50%……

(早くしないと……)

 80%……90%……

(あと、少し……)

 ちょろぎが起きたと同時に、敵の姿が見えた。

「!!!」

(だめだ……)撃ち負けると思った瞬間。

 ちょろぎは体力を回復せず、敵に向かって
5ミリ弾を連射した。

 ――――――――


 一瞬画面が固まる。


 直後、WINNERの文字が画面いっぱいに表示された。


(勝った……)杏瑞は緊張が一気に解けた。


ちょろぎ︰
 「危なかった 笑 」

アプリコット︰
 「もう、だめかと思いました 笑 」

ちょろぎ︰
 「とても楽しかったです。ありがとう」

アプリコット︰
 「こちらこそ。ちょろぎさんのおかげで勝てました」


 二人で褒め合いながらゲームは終了した。


――――――――――――――――――――


 画面はロビーへ戻り、アプリコットに話しかける。


(お疲れさま、アプリコット。最後の試合、勝ててよかったね)

(ちょろぎさんのおかげだったね。すっごく楽しかった……)

(私がヘタだったから……痛い思いをたくさんさせてごめんなさい……)

(これからはゆっくり休んでね。お疲れさま)

 心の中でアプリコットに感謝とお詫びを言って、アンインストールしようとしたが、

(そういえば衣装のスキン、結構貯まってたっけ……)

(最後に、ファッションショーをしようかな)

 50着近く集まった衣装を最後に着せてあげようと、あれこれ試してみた。

(この服かわいい! あ、これもいいな。 
これは……ダメ。こんなの着せたくない)

(このウィッグ、結構似合うな。これも……)

 着替える度に、ひとつひとつコメントしていた。

 その度に笑ったり、苦い顔をしたり、微笑んだり……

『友達』に近い感情を抱いていたアプリコットに、お別れをしないといけない。そう思った時

 

     杏瑞は泣いていた……