先生は初心


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淡い桃色の桜の花びらが、膝上まで短くしたスカートと一緒に、そよそよと吹く風に揺れている。
今日から私は高校二年生。
正直に言って、すごく嫌だ。
せめてクラスメイトがいい感じだといいんだけど――。
私はクラス発表の掲示板の前に立った。
「えーっと……黒澤由花、黒澤由花……」
あった、あった。
二年D組。うわ、だいぶ階段登らないとじゃん。
そのとき――
「由花ー!今年もおんなじクラスだよー!」
嬉しそうに手をブンブン振っている声が聞こえた。
今日の恵美は一段とおしゃれだ。新学期だからかな。金髪に染めた髪をゆるく巻いている。
恵美とは中二の頃からの親友。
趣味も合うし、学校に来る理由はほぼこの子のためと言ってもいいくらい、大好きな親友だ。
「おぉ、やったね! ていうかあまねとかいう人いたっけ?」
うちの学校は、クラス発表の紙の端に担任の先生の名前も書いてある。
「新しい先生っぽかったよー。イケメンらしいよ!楽しみ〜!」
「ほんと、イケメン好きだね」
恵美は“イケメンと付き合うのが夢”だと、出会った日から力説している。
「そろそろ教室行こー」
「そーだね。何組だった?」
「二のDだよー」
二年D組か。まぁまぁ距離あるな。
新しい靴箱に、去年から使っているベージュのスニーカーをしまう。鞄から新品の上靴を取り出して履き替えた。
いつもと同じはずの行動なのに、少しだけ気分が違う。
ワックスでつるつるになった廊下を、恵美がフィギュアスケーターみたいに滑り出した。
「何やってんの(笑)」
「案外楽しいんだよ〜。由花もやってみなって!」
「私はやらな――」
その瞬間、足が滑った。
後ろに倒れそうになった体を、誰かの腕が支える。
腰に手が回され、胸に引き寄せられた。
――あ、助けてくれたんだ。お礼言わなきゃ……って。
最悪。
目の前にいたのは、同じクラスの狩野蘭童(かの・らんどう)だった。
中学の頃から、とにかくしつこい男。
顔はまぁイケメン……なのかもしれないけど、性格は最悪。
私のことが好きらしく、彼氏でもないのに彼氏面してくる。正直、うざい。
「大丈夫? 痛くなかったか?」
「だ、だいじょうぶー……(棒)ありがとうー」
腰に回された手を外そうとするけど、こいつは全然離そうとしない。
なにこれ。一ミリもときめかないんだけど。
「あの、離してくんない?」
「……」
無言?
きも。
周りからは、
「見て、美男美女が抱き合ってるんだけど!?」
「まじじゃん、尊い〜♡」
とか聞こえてくる。
何が尊いだよ。全然嬉しくない。
イラつきが限界に達して、私は思いっきり蘭童の頬を叩いた。
「いい加減に離して。私はあんたのこと、好きでもなんでもないから」
「由花、かっこい〜」
「うっさい。恵美、行こ」
蘭童の手が緩んだ隙に、私は恵美のほうへ駆け寄った。
あいつはビンタされた頬に手を当てながら、じっとこちらを見ている。
……いい気味。
さすがに、ここまでされて近づいてくるほどのアホじゃないでしょ。
「あいつ、だいぶしつこかったね〜。由花って変なやつにモテるよね〜」
「なんでだろうね〜。どうせなら、もっとクールで裏表のないイケメンと付き合いたいのに……!」
私の理想である“クールイケメン”は、どこかにいないものか。
寄ってくる男子は、愛が重かったり、オタクだったり、そんなのばっかり。
最初は蘭童に好かれてるって知って、死ぬほど嬉しかったのに……今はただただキモい。
――蛙化ってやつだな。
「由花ファイト! 由花ならすぐいい人できるよ! 可愛いんだから!」
「恵美〜。やっぱり今は親友が一番だな〜(泣)」
半泣きになりながら私は恵美にすがった。




私は恵美と笑いながらハイタッチした。
私と恵美は中学生の頃からの親友。私が好きな漫画から始まって今もたまにその話をしてる。
すると、同クラのゆいゆいから声をかけられた。ゆいゆいと私はおんなじ名前だから私はゆいゆいと呼んでいる。

「ねぇ、2人とも!今度さ、またメイクしてくんない?この前のメイク彼氏から好評だったんだよねー!」

あぁ。そういえば彼氏とデートに行くからって言ってメイクしてやったっけ。

「全然いいぜー。あのメイクあんためっちゃ似合ってたもんな。」

「やっぱうちらの目は間違っていなかったかー。」

ありがとー。と言ってゆいゆいは自分の席に戻っていった。私たちはメイクが得意中の得意である。だからよくみんなからメイクのお願いがくる。

「おーいお前ら、全校集会始まるから廊下に並べー」

「はーい」

誰か忘れたけど先生が入ってきて言った。
みんながボソボソと文句を言いながら歩いている。

【体育館】
「進学おめでとう。」

これから校長の長話が始まるのか。めんど。
で、今年の先生は誰になるかなー?
誰でもいいけど。予想でもしよかな。
うーん、今回もおんなじルリちんもありえる。
でもなー…もういいや、わからん。足つら。
本当にこの時間は退屈である。ずっと立っているつらさの方が強いから暇つぶしすら真面目にできやしない。

【数十分後】
「やっと終わったかー!」

「つら」

「まじそれ」

「次担任かー」

「誰やろ」

そうみんなと話してたら同クラのとうふ(周斗)が

「みんなー教頭きたぜ」

と言った。

「お、来たか。誰だろなー」

私は机に頬杖をついて入ってきた教頭を眺めていた。

「えー。君たちの担任を紹介する。新しく入ってきた、天音くんだ。」

そう言って廊下の方を見た。
そしたらとんでもなく美形の男が入ってきた。
一気にクラス中が騒がしくなり、女子が
「え?かっこよくない?」
「わかるー。当たりかも」
と騒いでいる。
そんな中私は1人、目を見開いてその先生を凝視した。
やっば、イケメンすぎんか!?

すると、先生は自己紹介を始めた。