蝶々結び


夕暮れの街を駆ける。

外の空気は冷たく、頬に風があたる。
けれど、心の中は燃えるように熱かった。

「陽向先生……私、今すぐあなたに会いたい……!」

息が上がっても止まらない。
スニーカーの底がアスファルトを打つ音が、まるで鼓動みたいに響いた。
街の灯が滲む。涙がこみ上げて、走りながら笑ってしまう。

(私……こんなにも誰かを想って走ったこと、あったかな。)

かつての恋では感じなかった“確かな熱”が胸にある。
それはもう過去ではなく、今この瞬間に生きている恋だった。

「陽向先生……っ!」

夜の入り口で、心の中の声が風に乗って、まっすぐに溶けていく。



――走るほどに、恋は確信へ変わっていく。

彼に触れたい。

彼に会いたい。

それだけで、胸が満たされていく。