喫茶店にて。
「……っていう流れだった。」
早瀬先生は両手を広げて、ため息混じりに笑った。
「まぁ、喧嘩売ってきた挙げ句?
散々惚気られて?
最後には嫉妬全開だったんだけどさ。」
「……え?」
「いやぁ、びっくりだよ。あの人、病院じゃ爽やかスマイルのイケメン先生で通ってるんだろ?
実際は――けっこう、なんかとんでもない人だな。」
そう言って首をすくめる早瀬先生。
けれど、その目はどこか優しげでもあった。
「でも……あんなふうに“本気で誰かを守ろうとする男”を見るとさ、
ちょっと同情もするし、負けた気もするな。
……ってか結衣、大丈夫?顔、真っ赤だけど。」
「っ……!?」
結衣は思わず両手で頬を覆った。
まるで熱が出たみたいに、全身が熱い。
(陽向先生……嫉妬しないって言ってたのに……)
心の中で彼の言葉を反芻するたび、胸の鼓動が早くなる。
“僕の方が結衣を、君よりずっと愛してる”
――そんな言葉、初めて聞いた。
嬉しくて、恥ずかしくて、胸がきゅっと締めつけられる。
「……っ!」
結衣は立ち上がった。
イスの脚が床を鳴らす。
「早瀬先生、ごめんなさい。私……用事、思い出しました。
ちょっと、病院に戻ります!」
「え?お、おい、結衣!?まだココア――」
聞き終える前に、結衣はカバンを掴んで喫茶店を飛び出した。



