──────その後、月季宮に帰ると智愛が待っていた。
「智愛!大丈夫なの?ごめんなさい、私のせいで」
「そんなことはございません!美玉様がご無事で何よりでございます!」
落ち着いた様子だが、やっぱり頭上の文字は騒がしい。
【あぁ美玉様!また拝見できて幸せ!】
【苦しかったけれど、気合でなんとかなるものね】
この興奮のしようすらも久しぶりに思えて、また泣いてしまいそうになるが、今はだめだ。
色々なことがあったせいでもう日はとっくに沈んでおり、月が真上に来ようとしている。
「さぁ。今日はもう寝ましょう」
満月の光が月季を照らしていた。
◇◇
「お前本当に大変だったな。今度おすすめの飯屋連れてくよ」
「お気遣いありがとうございます」
長椅子に男二人で座るのは窮屈だが、上官の手前。そんな事は言えない。
主人のいない執務室は少し寂しげだが、気の所為かもしれない。
ようやく罪を裁けた。調査は苦労したが、美玉様のためだ。
身を砕いてでも守りたい存在。それは静様も同じだろう。
「・・・・・・で、例の家はどういう処罰なんだ?陛下が全て決めたので私はよく知らないのだ」
彼が息を潜めて聞いてくる。
俺はなるべく感情を出さないようにしながら淡々と話す。
「一族は全財産の没収と商いの停止。葉宇翔は北の最果てにある鉱山での無期限での重労働とのことです。地位も、富も、彼が執着していたものをすべて奪った上で放逐です」
「的確に地獄を味わせる構想か。陛下らしい、最も効率的で慈悲の欠片もないやり方だな」
「そうですね」
陛下は表舞台では慈悲に満ちた仮面をつけているが、本来の姿はそんなことない。
静様は肩を竦めるが、俺は言い切っていないのでまた口を開く。
「葉夏雲は、陛下が直々に選出された尼寺に行くそうです」
「それだけか?」
「そんな訳無いですよ。外界から遮断された部屋で、己の罪を永遠に書き続けるとのことです。唯一の武器である美貌を見せることも、称賛されることも、もう二度とありません」
流石に恐ろしく感じたのか、静様は自分の首筋をすっと撫でた。
いつも柔和な笑みを浮かべている主人のもう一つの顔。
敵と判断したものは物理的ではなく、対象が一番失いたくないものを判断し、じわじわと、かつ徹底的に奪い取る。
それが出来るのは彼が『千里眼』の異能を持っているから。
「美玉様の御前では甘々だが、敵に回せば死にますかね?」
「あぁ。彼女が傷つくことは国が滅びるよりも重い事だからな」
二人は遠くにある月季宮の明かりをを見つめた。
そこには世界一幸せな皇后と、彼女を溺愛し、そのためなら世界を滅ぼしかねない『加虐的な皇帝』がいる。
「智愛!大丈夫なの?ごめんなさい、私のせいで」
「そんなことはございません!美玉様がご無事で何よりでございます!」
落ち着いた様子だが、やっぱり頭上の文字は騒がしい。
【あぁ美玉様!また拝見できて幸せ!】
【苦しかったけれど、気合でなんとかなるものね】
この興奮のしようすらも久しぶりに思えて、また泣いてしまいそうになるが、今はだめだ。
色々なことがあったせいでもう日はとっくに沈んでおり、月が真上に来ようとしている。
「さぁ。今日はもう寝ましょう」
満月の光が月季を照らしていた。
◇◇
「お前本当に大変だったな。今度おすすめの飯屋連れてくよ」
「お気遣いありがとうございます」
長椅子に男二人で座るのは窮屈だが、上官の手前。そんな事は言えない。
主人のいない執務室は少し寂しげだが、気の所為かもしれない。
ようやく罪を裁けた。調査は苦労したが、美玉様のためだ。
身を砕いてでも守りたい存在。それは静様も同じだろう。
「・・・・・・で、例の家はどういう処罰なんだ?陛下が全て決めたので私はよく知らないのだ」
彼が息を潜めて聞いてくる。
俺はなるべく感情を出さないようにしながら淡々と話す。
「一族は全財産の没収と商いの停止。葉宇翔は北の最果てにある鉱山での無期限での重労働とのことです。地位も、富も、彼が執着していたものをすべて奪った上で放逐です」
「的確に地獄を味わせる構想か。陛下らしい、最も効率的で慈悲の欠片もないやり方だな」
「そうですね」
陛下は表舞台では慈悲に満ちた仮面をつけているが、本来の姿はそんなことない。
静様は肩を竦めるが、俺は言い切っていないのでまた口を開く。
「葉夏雲は、陛下が直々に選出された尼寺に行くそうです」
「それだけか?」
「そんな訳無いですよ。外界から遮断された部屋で、己の罪を永遠に書き続けるとのことです。唯一の武器である美貌を見せることも、称賛されることも、もう二度とありません」
流石に恐ろしく感じたのか、静様は自分の首筋をすっと撫でた。
いつも柔和な笑みを浮かべている主人のもう一つの顔。
敵と判断したものは物理的ではなく、対象が一番失いたくないものを判断し、じわじわと、かつ徹底的に奪い取る。
それが出来るのは彼が『千里眼』の異能を持っているから。
「美玉様の御前では甘々だが、敵に回せば死にますかね?」
「あぁ。彼女が傷つくことは国が滅びるよりも重い事だからな」
二人は遠くにある月季宮の明かりをを見つめた。
そこには世界一幸せな皇后と、彼女を溺愛し、そのためなら世界を滅ぼしかねない『加虐的な皇帝』がいる。



