◼️◼️◼️にまつわる物語


 @はたはた-bc2
 
 ナナシさん、こんにちは。いつも動画拝見しています。
 もうここのコメント、見てないかな? お忙しいですよね。メインチャンネルのほうも最近、更新止まってるみたいだし。ぼくの体験談の動画は公開されるのかな。もう、どちらでもいいですが……。

 幽霊が出る工場の続きの話です。今回で最後になります。

 今までのことを一応説明しておきます。冒頭に載せた求人の工場ですが、ここは幽霊が出ます。近づくと肩を掴んでくる幽霊です。特に目が合うと危険なようなので、この求人っぽいなと感じるものは避けてください。場所はN県です。霊感がない人も注意が必要です。もし知らずに応募してしまった場合は、壁際には近づかないように。幽霊は工場の隅にいます。ご注意ください。
 ぼくはこの求人に申し込み、ある女の子と出会いました。
 ぼくと同じクルーさんです。かわいい子で、少しミステリアスで、会うたびに気になってました。でも、もう会えなくなってしまいました。そのことについて記します。

 彼女と知り合ってから一ヶ月、ぼくは彼女に会うために何度もこの求人に応募しました。
 彼女はいつもこの求人に応募しているのですが、目的はお金のためではないようでした。なんとなくですが、彼女はその幽霊に会うためにここに来ているような気がしていました。なにか事情があるのでしょう。でも、ぼくは無理に訊くことはしませんでした。少しずつ距離を縮められたらいいなと思って、会うたびに彼女とたわいのないおしゃべりしていました。そして先日、ようやく仕事終わりにご飯に誘うことができました。
 でもそれは、好意が発端のものではなくて。その日の彼女はいつにも増して表情が暗く、なにを話しかけても上の空だったから、このまま別れることができなかったんです。なかば無理やり駅前のマクドナルドに連れて行き、話を聞きました。
 幽霊は、彼女の友達なのだそうです。
 小学生のころ、近所に住んでいてよく遊んでいた、親友だったそうです。
 彼女が幽霊となった友達を見つけたのは、半年ほど前のことでした。日頃から霊感の強かった彼女は、この近辺で妙な気配を感じ、その違和感が気になってこのスポットバイトに応募したそうです。そして工場の中で、彼と再会しました。ショックを受けました。幽霊となった、ということは、彼は亡くなっているということです。彼は中学生になるころ引っ越したのか、突然いなくなったそうでした。
 ぼくはそこまで聞いて、彼女がなぜこの求人に応募し続けていたのか察しました。彼のことを想ってのことでしょう。まだ成仏できていない親友を、せめて見守るためにここに通っていた。彼女が幽霊を見るときはいつだって、険しい表情をしながらも、切ない目をしていたから。
 でもそれは違いました。彼女は真っ青な顔をして、ぽつりと口にしました。
 彼女は、彼を監視するために工場に来ていたと言うのです。
 さっぱり意味がわかりませんでした。監視なんて、どうして。大好きだった親友に対して、どうして。なにか理由があったとしても、亡くなった人を監視する理由など思いつきません。彼女は目の前のハンバーガーに手をつけず、ゆっくりと話し出しました。そこには彼女の住んでいた場所が関係しているようでした。
 彼女の生まれた土地。それは工場からほど近くの、N県の外れです。そこにはかつて村があり、そこに住んでいた人間たちはみな、呪いを受けていたそうです。
 『敵』を監視し続けないと、精神を病み、廃人となってしまう呪い。
 彼女は小さなころから不安を感じながら生きてきたそうです。誰かに見られている気がする……。誰かに危害を加えられそうな気がする……。その不安は年齢を重ねるごとに強くなっていったそうです。そして、それを緩和するには『敵』を監視し続けるしかないそうです。『敵』を見つけ出し、定期的に監視することで、自分は危害を加えられないのだと安心できる。監視することで、一時的にであるけれど不安はなくなるのだと。
 彼女にそう教えたのは、父親でした。彼女の父親も同じく、生まれたころから不安感に苦しめられてきたそうです。彼女の父親の父親も。その父親も。
 父親は彼女から幽霊の居場所を聞き、半年前からあの工場の正社員として働きはじめたそうです。それからは、ほぼ寝たきりだった父親は元気を取り戻したと。
 ということは、ふたりにとって、あの幽霊は……。

 すみません、書き疲れてしまいました。夕方に続きを書きます。