◼️◼️◼️にまつわる物語


 @櫻子-air

 この求人なのですが、私も応募したことあります。コメント見失ってしまったのですが、ほかにも見たっていう人いましたよね? 雑誌っぽいデータって書いてあったかな。忘れちゃった。
 私のときも違う内容でした。私のときは絵本っぽいデータでした。児童向けの、優しめの文章と絵が載ってるんです。ストーリーはホラー系。ホラーって、絵本にしては珍しいジャンルですよね……でも、学校の七不思議とかを考えると珍しくもないのかな。このあとのコメントに全文、載せておきます。ちなみにこれは市販の絵本じゃありません。手作りだそうです。

 誰かも書いていましたけど、データ入力の業務は難しいことはなくて、あっさり終わりました。求人に書かれている通り、紙媒体で記録した昔の顧客データをパソコンに移すって作業でした。顧客データっていうか、利用者データっていうか。本当にあっさりです。それで、帰り際に気になって職員さんに添付データのことを訊いてみました。業務内容とあまりにも関係なさすぎて、なんでこんなものをクルーに読ませているのか気になったんです。そしたら職員さん、疲れ切った顔で「わかりません。オーナーの指示なんで」って言ってました。ほかの職員さんはたまたま出払っていたからか、いろいろ話してくれました。
 オーナーさん、この会社の建物に住んでいるらしいです。それで、毎日顔を合わせるものだから余計なお願いされて困っていると言ってました。わがままなんだそうです。こだわり強くて、大部屋じゃなくて個室を用意しろだとか、部屋に持ち込むすべてのものに細かい口出ししてきたりだとか、めちゃくちゃなんだそうです。人手不足だからスポットバイトで求人出したら、「ひとり多く募集かけて、こっちに回せ」って言ってきたり。やばいですね。なんか、ナナシさんの動画に出てくる人と似てる気もするけど……え?

 このデータ入力の求人も、オーナーの指示だそうです。仕事はなんでもいいから、とにかくたくさんの人を呼べって。その人たちに添付データを見てもらえって言われたそうです。データはオーナーに頼まれて職員さんたちが作ったものです。「これこれこういう村があるから、ここに住みたくなるような資料を作れ」と。
 あまりに私的な命令で、職員さんたちは怒り奮闘だったそうですよ。だから、みんなで好き勝手作ったそうです。絵が好きなスタッフは業務中に絵本作ったり、AI生成で雑誌風にしてみたり。内容は一応オーナーに言われた情報を盛り込んだけど、腹が立ったから、逆に住みたくならないような内容にしたそうです。オーナーは指示するだけしてろくに確認もしなかったから、バレないんだって。ナナシさんが動画にしてた『お炭さま』のデータは、SNSに本当にあったやつです。オーナーの言う『村』に似たポストを見つけたから、そのスクリーンショットを撮って手抜きしたって言ってました。
 話によるとその村は今は存在していないそうなんですけど、以前は本当にあったそうです。オーナーの故郷なんですかね。なくなってしまった故郷の暮らしを書き留めておきたかったのかもしれないけれど、職員さんからしたらいい迷惑です。相当ストレスだったのか、単発バイトの私にペラペラ話してくれました。対応は疲れるけど、給料はいいからここで働いているそうです。かわいそうですね。
 情報を広めてももう村は戻ってこないのに。理解に苦しみます。