@はたはた-bc2
仕事の日から一週間が経ち、またあの工場の求人に応募してみました。
怖い目に遭ったのに、また参加するとか馬鹿ですよね。でも求人の通知が来て、即座に申し込んでいる自分がいました。それは、前回のコメントにたくさんいいねがついたことで、続きのネタが欲しくなったっていうのもあります。ただ、一番の理由はほかにあります。
この求人は毎回四人分の人員を募るんですが、通知を開くとひとつだけすでに枠が埋まってたんです。彼女だと思いました。前回話しかけてくれた、霊感のある女の子。ぼくはまた彼女に会いたかったんです。かわいい子だったから……もう、シタゴコロ全開です。本当に馬鹿ですよね。
現地に十五分前に到着すると、あの子の姿が見えたのでわざと視界の中に入ってみました。彼女はぼくのことを覚えていてくれたみたいで、確かめるみたいにぼくの顔を見返しました。表情が乏しい人なのでなにを感じているのか読み取れませんでしたが、声をかけてくれました。
「また来たんですね」
「はい。仕事きついけど、一日で一万近く稼げるのはかなりおいしいですから」
「まあ、そう言われればそうですね」
「あなたもお金が必要で来てるんじゃないんですか?」
「別に、そういうわけじゃないですけど」
てっきりぼくは、彼女は金欠でここに来ているのだと思っていました。というか、こんな工場に来ている人たちなんてみんなそうだと思っていました。でも彼女はそうでもないような雰囲気で、お金なんてどうでもよさそうな顔をしてロッカーに向かっていきました。彼女のミステリアスなところにぼくはますます惹かれてしまいました。自分でもちょろいと思います。
仕事が終わり、作業場から出る準備をしていると、女の子が工場の壁際を眺めているのに気づきました。
見ているのは、幽霊がいたあの場所です。ぼくは今日、前回とは持ち場が違ったのでその付近に近づくことはありませんでした。でも彼女がいたので、勇気を出して近づいてみました。
やはり、そこには幽霊が立っていました。工場内は天井の照明が目に刺さるくらい明るいのに、その周囲だけは光が行き届いていないのか、薄ぼんやりとしていました。
離れたところから見ていたので定かではありませんが、前回と同じ男の人で間違いなかったと思います。男の人、というか、よくよく見ると男の子でした。小学生くらいの小さな子ども。工場内には白い作業服を着ている人しかいない中、その男の子は黄色い半袖に半ズボンという、普通の格好でした。
「あなたは見ないほうがいいよ」
彼女が背を向けたまま、ぼくに話しかけました。
どきりとして彼女の白い帽子を見つめると、彼女はゆっくりと振り向きました。
「次は殺されるかもしれないから」
「……君は平気なの?」
「彼は私を殺さないもの」
「殺さない……」
どういう意味でしょうか。計りかねていると、彼女が歩き出したのでぼくもそのあとを追いました。
「もしかして、あの男の子と知り合いなの?」
思い切って訊いてみました。
彼についての情報を持っていることや、今の口ぶりから、なんとなく彼女は前から彼のことを知っていたのではと思ったのです。
そこには嫉妬のような感情もあったかもしれません。彼女はなにに対しても冷めているように見えて、彼に対する視線だけは熱く、強い感情を含ませているように感じたのです。
「そうやって無闇に首を突っ込むと、今度は本当に殺されるよ」
彼女は淡々と答えました。その言葉に、ぼくは思わず肩をさすりながら黙り込みました。
ロッカーへの道を歩きながら、ぼくはこの求人のレビュー欄を思い出していました。
ぼくは今まで、求人のレビュー欄をまともに見てきませんでした。時間と給与だけに重きを置いていたので、見る必要を感じていなかったのです。でも、この工場については怖い思いをしたので、なんとなく確認してみました。何千件もあるレビューをさらさらとスクロールしていくと、〈大変でした〉〈ありがとうございました〉〈次回もよろしくお願いします〉といった言葉の中に、違和感のあるレビューを見つけました。
そのいくつかを、次のコメントにコピペしておきます。
ぼくと同じ思いをした人は、ほかにもいたんでしょうね。
仕事の日から一週間が経ち、またあの工場の求人に応募してみました。
怖い目に遭ったのに、また参加するとか馬鹿ですよね。でも求人の通知が来て、即座に申し込んでいる自分がいました。それは、前回のコメントにたくさんいいねがついたことで、続きのネタが欲しくなったっていうのもあります。ただ、一番の理由はほかにあります。
この求人は毎回四人分の人員を募るんですが、通知を開くとひとつだけすでに枠が埋まってたんです。彼女だと思いました。前回話しかけてくれた、霊感のある女の子。ぼくはまた彼女に会いたかったんです。かわいい子だったから……もう、シタゴコロ全開です。本当に馬鹿ですよね。
現地に十五分前に到着すると、あの子の姿が見えたのでわざと視界の中に入ってみました。彼女はぼくのことを覚えていてくれたみたいで、確かめるみたいにぼくの顔を見返しました。表情が乏しい人なのでなにを感じているのか読み取れませんでしたが、声をかけてくれました。
「また来たんですね」
「はい。仕事きついけど、一日で一万近く稼げるのはかなりおいしいですから」
「まあ、そう言われればそうですね」
「あなたもお金が必要で来てるんじゃないんですか?」
「別に、そういうわけじゃないですけど」
てっきりぼくは、彼女は金欠でここに来ているのだと思っていました。というか、こんな工場に来ている人たちなんてみんなそうだと思っていました。でも彼女はそうでもないような雰囲気で、お金なんてどうでもよさそうな顔をしてロッカーに向かっていきました。彼女のミステリアスなところにぼくはますます惹かれてしまいました。自分でもちょろいと思います。
仕事が終わり、作業場から出る準備をしていると、女の子が工場の壁際を眺めているのに気づきました。
見ているのは、幽霊がいたあの場所です。ぼくは今日、前回とは持ち場が違ったのでその付近に近づくことはありませんでした。でも彼女がいたので、勇気を出して近づいてみました。
やはり、そこには幽霊が立っていました。工場内は天井の照明が目に刺さるくらい明るいのに、その周囲だけは光が行き届いていないのか、薄ぼんやりとしていました。
離れたところから見ていたので定かではありませんが、前回と同じ男の人で間違いなかったと思います。男の人、というか、よくよく見ると男の子でした。小学生くらいの小さな子ども。工場内には白い作業服を着ている人しかいない中、その男の子は黄色い半袖に半ズボンという、普通の格好でした。
「あなたは見ないほうがいいよ」
彼女が背を向けたまま、ぼくに話しかけました。
どきりとして彼女の白い帽子を見つめると、彼女はゆっくりと振り向きました。
「次は殺されるかもしれないから」
「……君は平気なの?」
「彼は私を殺さないもの」
「殺さない……」
どういう意味でしょうか。計りかねていると、彼女が歩き出したのでぼくもそのあとを追いました。
「もしかして、あの男の子と知り合いなの?」
思い切って訊いてみました。
彼についての情報を持っていることや、今の口ぶりから、なんとなく彼女は前から彼のことを知っていたのではと思ったのです。
そこには嫉妬のような感情もあったかもしれません。彼女はなにに対しても冷めているように見えて、彼に対する視線だけは熱く、強い感情を含ませているように感じたのです。
「そうやって無闇に首を突っ込むと、今度は本当に殺されるよ」
彼女は淡々と答えました。その言葉に、ぼくは思わず肩をさすりながら黙り込みました。
ロッカーへの道を歩きながら、ぼくはこの求人のレビュー欄を思い出していました。
ぼくは今まで、求人のレビュー欄をまともに見てきませんでした。時間と給与だけに重きを置いていたので、見る必要を感じていなかったのです。でも、この工場については怖い思いをしたので、なんとなく確認してみました。何千件もあるレビューをさらさらとスクロールしていくと、〈大変でした〉〈ありがとうございました〉〈次回もよろしくお願いします〉といった言葉の中に、違和感のあるレビューを見つけました。
そのいくつかを、次のコメントにコピペしておきます。
ぼくと同じ思いをした人は、ほかにもいたんでしょうね。



