平凡な日々に差し込む光



「…では、二人一組でペアを作ってください」


その一言で、思わず頭を抱えた。



「はぁ……」
外国語専攻の授業中、俺は顔を机に突っ伏していた。
生憎、この講義に出ている生徒の中で友達は一人もいない。
早くペアを作らなければならないと分かっていながらも、俺は重たい頭をあげることすら出来なかった。



「水野くん」


え、誰___ そう思ったのも束の間、伏せていた顔を上げてみるとそこには、この大学で一番モテていると噂の、橘深月(たちばなみつき)が立っていた。
なぜこんなイケメンが俺の目の前にいるのか、頭の整理が追いつかないでいると


「あ…ごめん急に」

「いや全然、大丈夫」

「水野くんが良ければ、俺とペア組まない?」


こちらの方が、余計頭の整理に時間がかかりそうな内容だった。


「え…俺と?」

「うん」


ペアになること自体はいいのだが、俺以外にペアになる相手なんていくらでもいるはずだろう。
なんで俺?と考える間もなく、橘深月が口を開いた。


「…もしかしてペア決まってた?」

「いや、決まってない!」

「そう、よかった」


そう言って橘深月は柔らかい笑みを浮かべた。
何が「よかった」だ。俺にとっては全然よくないことなんだけど。


「じゃあ、俺からするね。」

「あ、うん」


ペアになる、と言った覚えはないが…話しかけてくれたこと自体奇跡のようなものなので、あまり気にしなかった。



「…はい、次どうぞ」

「あ、うん」


あまりにもスラスラと話すから、外国語があまり得意でない俺は、緊張しながら手元の紙に目を落とす。


「……えっと、」

「ゆっくりで大丈夫だよ」


途中、苦戦していると優しく声をかけてくれた。これがモテ男か、と勝手に納得する。
カタコトながらも最後まで読み終えたと同時に、講義室内に教授の声が響く。



「はい、大体終わりましたね」

「次回の講義までに、今のペアでレポート作成してきてくださいね」


…何かの聞き間違いだろうか?
ペアで、レポート作成……今のペアで…?
隣に座っていた橘深月は、困惑している俺を気にも留めずに声をかけてくる。


「じゃあ次もよろしくね。あ、連絡先交換しようよ」

「え、うん…よろしく」


断る理由もなく、俺は流されるように橘深月と連絡先を交換した。