きみが教えてくれた、世界で一番優しい青

放課後の「色彩探検」を終えた僕たちの前には、燃えるような夕焼けが広がっていた。

校門へと続く緩やかな坂道。
西日は最後の力を振り絞るように、校舎の窓を、グラウンドを、そして僕の隣を歩く彼女の横顔を、鮮烈な橙色に染め上げている。


「ねえ、秋月くん。見て」


坂の途中で足を止めた彼女が、ふっと空を仰いだ。

つられて見上げた先、地平線に近い空の一部だけが、燃えるような朱色の隙間で、不思議なほど透き通った青を残していた。
それは、あの日、階段途中の踊り場で彼女が僕に教えてくれた、何よりも大切な色で、切実な名前を持つ色。

(……勿忘草色だ)

僕はその名を、確信を持って口にしようとした。
昨日買ったばかりの色鉛筆の重みをポケットに感じながら、彼女がくれた「杖」で、今度は僕が彼女を驚かせたかったのだ。
けれど、僕が息を吸い込むよりも早く、彼女の唇からこぼれた言葉は、僕の予想を無惨に裏切るものだった。


「空、綺麗だね。……あんなに透き通るような『白磁(はくじ)色』、初めて見たかもしれない」


……白磁?

心臓の奥が、冷たい指先で直接掴まれたような気がした。
とっさに色見本帳に目を落とす。

白磁色。
それは、透き通るような白さの中に、ほんのわずかな青みを感じさせる、硬質な「白」を指す言葉だ。

何を言っているんだろう。

彼女が指差しているのは、どこからどう見ても、あの可憐な、泣きたくなるほど鮮やかな「青」だ。
そこにあるのは、空気をたっぷり含んだ潤いのある勿忘草色であって、決して冷たく乾いた磁器の色なんかじゃない。