透き通る空気を覚えていますか。暖かい気持ちを覚えていますか。
私との過去や未来なんて思い出さなくていいから、ずっと抱きしめてきたものを思い出して。
素敵な出会いを覚えていますか。綺麗な景色を覚えていますか。
私の見た目や夢なんて忘れてしまえばいいから、ずっと守ってきたものは忘れずにいて。

飲み込む粒の白よりも白い冬から、あなたの温もりだけが抜けていくのなら。
突然何も見えなくなったあの日々から、あなたの言葉だけが掠れていくのなら。
もう恋も愛もいらないから、ただずっと幸せでいてほしい。


息ができない世界を覚えていますか。冷たい視線を覚えていますか。
私との嫌な思い出なんてすぐ忘れちゃうから、もっと自分を傷つけるものに目を向けて。
残酷な別れを覚えていますか。終わりのない苦しさを覚えていますか。
私は私でちゃんと生きていけるから、もっと自分に愛情を注ぎ続けていて。

止まらない心臓の奥の消えない記憶から、あなたの笑顔だけが崩れていくのなら。
揺れる視界と曖昧で鮮明な意識から、あなたの鼓動だけが聞こえなくなるのなら。
もう声も形もいらないから、ただ何も失わないでいてほしい。

口からでる全ての重荷たちから、あなたと出会えた奇跡さえ流れていくのなら。
震え続ける指先の未来から、あなたの姿だけが消えていくのなら。
もう人生も世界もなんにもいらないから、ただあなたのままでいてほしい。

ただあなたのままでいてほしい。