まだ、春を知りたくない。──ただの、特別な休日


 。❀·̩͙꙳。Ohno_Shun。❀·̩͙꙳。


 「好きです!付き合ってください!」
 「こんな俺で良ければ。」

 そんな声がテレビから聞こえてくる。
 その甘い雰囲気が鬱陶しくてリモコンを手に取って乱暴にボタンを押す。
 俺にはこんな青春が訪れることもなければ、こんな想いを抱くこともないだろう。
 菖蒲第一中学校2年生、吹奏楽部所属、彼女なし歴=年齢の俺、大野(おおの)は今日もだらだらとテレビを見ている。
 来週からテストだというのに俺のやる気は一向に出ず、ソファに寝っ転がりながら、適当にテレビを見て、お菓子を食べてゲームをして…なんていうとってもテスト前だとは思えない過ごし方をしている。
 だって頑張ったって仕方ないじゃないか。
 出る杭は打たれるだとか、努力は全部無駄になるだとか。そうだろう?だから俺は何もしない。
 とりあえず俺はまぁ、今を楽しく生きたい。


。☾·̩͙✧。Hara_Marino。☾·̩͙✧。


 「好きです!付き合ってください!」
 「こんな俺で良ければ。」

そんな声がリビングに響く。
あぁ私も、いつかはこんな恋がしてみたい。
でも、そんなの表には出せないし、すこしでもクールな感じでいたい。
今日も私原(はら)まりのはヘアアイロンと格闘して、この長い髪を丁寧にまっすぐにしている。
菖蒲第一中学校吹奏楽部所属2年生の私には、彼氏なんかできたことない。
前髪は一部ピンでとめて、少しでもかわいく、明るく見えるように工夫をする。
リボンをキュッと締めて、清潔感を出す。
ほんのり唇にピンクのリップをのせて、ほほにチークをのせる。
誰でもいいから、私のことを少しでもかわいいって思ってくれる人はいないのかな。
あぁ、一人だけ、男友達がいる。
けど、完全に幼馴染だしどうせ恋愛対象ではない。
それに、あんな奴と付き合うなんて到底考えられない。
とりあえず、あいつじゃない誰かに、好きって思ってもらいたい。


 。❀·̩͙꙳。Ohno_Shun。❀·̩͙꙳。


ピコン

ブレザーの中にしまい込まれていたスマホが通知音を鳴らす。
あー。原からのゲームのお誘いか?
そう思った俺、大野はブレザーの掛けられているクローゼットに向かった。
スマホの画面を見ると、原のアイコンの隣には「今週末暇?」と淡々としたメッセージが送られてきていた。
「暇だけど」
そう返して原からの返信を待つ。
数分待ったが返信が来ない。
あー。もうこれ電話した方が早いじゃん。
そう思った俺は原の電話番号を入力し、発信ボタンを押した。
「ぅあ!?」
原の情けない声が聞こえてきた。
なんだか無性に面白くて爆笑する。
「原w今何してたのww」
もう笑いが止まらない。普段俺はこんなに爆笑するわけないのに、なんで原といるとこんなに笑ってしまうのだろう。
「えぇー。なんでこのタイミングで電話かけてくんのぉお?」
いつにもなく原が騒いでる。
「だって返信来ないんだもん。仕方ないじゃん。」
「返信来ないってことは忙しいんだよw分をわきまえやがれ。」
あー。ひでぇこといってくる。
「忙しかったの?」
どうせ原なんて暇だろう。いいじゃないか電話かけても。
「いや、まぁ。い、いそがしかしかったっちゃ忙しかったな。」
おいw動揺が出すぎてるぞ原。
なんか原と一緒にいるとほんとのほんとの素の俺でいれる。
「え、てかさ今週末映画いこうよ。」
「へ?なんで?」




まだ未完成です!続きをお楽しみにー!